受験期の不安、軽くするには?早稲田大学・学校心理学を専門とする本田恵子教授にインタビュー!

みなさんこんにちは~!

空気の澄んだ季節がやってきましたね。寒さを感じる朝に布団の中でぬくぬくする幸福感、早く巻きたいマフラー、街は赤と緑でいっぱいで歩くだけで心が躍ります。筆者は仙台出身なのですが、朝起きて窓を開けたときに雪一面銀世界な日はなんだか特別な感じがしてとても好きでした。

共通テストや二次試験勉強も追い込みのピーク。緊張や不安、焦りを抱えていませんか?こういうときは心が安定しなくて周りの目を気にしてしまったり、つい感情をぶつけてしまったりしまいがちですね。

なぜ、そうなってしまうのでしょう?それは脳や身体の状況が関係しているからなのです。焦りや不安、イライラを感じた時に心や脳で何が起こっているかを知ると自分自身で感情をコントロールしやすくなるかもしれません。

実際に大谷選手は、試合前に静かな場所で過ごすことで雑念を減らし、「日常モード」から「競技モード」へ切り替えるルーティーンを持っているそうです。また、サッカーの三笘薫選手は『メタ認知』を活用してプレーの質を高めています。「メタ認知」とは「自分は今こう感じたり、考えたりしている」と自分自身の感情や思考を一歩引いた観点から見て分析・調整することです。ドリブルでも、「自分は敵から見るとどう見えているのか」「味方のためにどのような動きを取ればよいのか」など自分を客観的に見ることで2022年ワールドカップで大きな成果をあげました。

今回は、早稲田大学で教育心理学を学んでいる私、佐藤杏果が「学校心理学」を専門とする本田恵子教授に「不安やイライラを軽くして快適な受験生活を送るための方法」を伺ってきました。

みなさんの不安を少しでも軽くできるような記事になっているかと思います。ぜひご覧ください!

本田 恵子(ほんだ けいこ)

早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専門は学校心理学、アンガーマネジメント。中学校・高校の教員を経て渡米し、米コロンビア大学Teachers Collegeにてカウンセリング心理学博士号を取得。帰国後はスクールカウンセラーや大学教員として、学校現場における心理的支援や支援プログラムの研究・実践に携わる。アンガーマネジメント研究会代表。公認心理師、臨床心理士、学校心理士、特別支援教育スーパーバイザー。

目次

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焦りや不安、イライラを感じた時に心や脳では何が起こっている?

ー受験期には基準点に届かなくて焦ったり、合格するか不安になったり、理由もなく何だかイライラする……というようなことがあります。こんな時、心(脳)では主にどのようなことが起こっているのでしょうか?

本田先生:ストレスを感じると神経細胞の働きが弱まりやすくなりコルチゾール(ストレスホルモン)が増加します。そのため、感情を司る低次の脳が敏感になって不安・イライラの状態になりやすいんです。

また、「やらなきゃ…!」と追い込んで常にストレスを抱えていると主に日中に有意である交感神経が過度に働いて体が“ずっと戦闘モード”のままになります。

この交感神経が働きすぎると、休息や睡眠に向かう夜に優位になるはずの副交感神経の働きが抑えられてしまいます。その結果、睡眠の質が低下したり、胃腸の調子が悪くなったりすることがあるんです。

ーありがとうございます。イライラや不安には科学的に理由があるんですね。では、ストレスを少しでも減らして自律神経を整えるために、簡単に実践的なことは何かありますか?

本田先生:まずは質の高い睡眠が大切です。ぜひ寝る前はスマートフォンの使用は控えて就寝時間・起床時間を一定にして規則正しい生活の維持を心がけましょう。

そして、緊張とリラックスをうまく組み合わせること。勉強づめになるのではなく、休憩時は学習の場から離れて適度に楽しみましょう。みなさんは勉強の休憩時間、何をしていますか?

よく、休息の方法として挙げられるのがドラマ。ドラマは展開が気になって依存的になりやすく、「物語を理解する」「共感する」等の処理が脳にとっては重く、脳が疲れやすくなります。勉強の休憩方法としてはあまり良いとはいえないでしょう。

ーありがとうございます。最近の流行りでいうと「ショート動画」も注意が必要かと思います。ショート動画って短時間で見やすくて、ついスクロールして長い時間見てしまうことってありますよね。そしてその後なかなか勉強が手につかない…。

これもまた、人間の「脳」が関係しています。ショート動画は1本あたり10~30秒程度で見れて、短い時間に強い刺激を連続的に触れることができます。脳が次の刺激を求め続けてしまうことで集中力が切れやすくなり、さらに強い刺激によってドーパミンが急上昇します。その刺激に慣れてしまうためにショート動画を見た後はなかなか勉強が手につきにくく、モチベーションが下がってしまうんです。

ストレス軽減のすゝめその一:ストレス軽減には規則正しい生活、質の高い睡眠が大事。

ーモチベーションって脳が関係していて、科学的に説明できることが面白いですね。

私は音楽を聴くことが好きで作業をするときもBGM代わりに聴いているのですが、音楽を聴くことはストレスの軽減に効果はあるのでしょうか?

本田先生:音楽でも言葉が入っていないものは勉強のペースメーカーになってくれます。言葉が入っていると言語の学習の邪魔になってしまいます。

モーツァルトは英語の勉強をするときにバックミュージックで流すと勉強がはかどります。その理由は、音の幅が英語と類似しているから脳が活性化しやすいからです。

また、暗記ばかりをやるよりは途中に暗記科目以外をはさんで暗記をした方が効果的です。

休憩方法として、散歩もいいですね。要は、自分が〝緊張を解ける〟休憩法がいいです。

生活習慣・食事などの身体的ケア

ー受験期におけるストレス軽減に効果的な生活習慣・食事などの身体的ケアを教えてください。

本田先生:質の良い睡眠で歯ぎしりがあるケースは緊張、かみ合わせが悪いと頭痛、睡眠が浅くなる原因となります。
対応としては歯医者さんで自分専用のマウスピースをもらいましょう。

また、肩こり、頭痛のお悩み。これは枕が合わない可能性があります。眼精疲労への対応としては休憩時間に目の周りのマッサージ。肩甲骨が張り付かないように、肩の周りをほぐす運動をしましょう。
いやな夢を見るケース。これは気になることがある場合があります。対応としては書き留めて、何を訴えているか考えてみましょう。 そして叶える予定を立てましょう。もし続くようでしたら専門家に相談を。

食事に関しては、脳を動かすのは、糖・酸素です。ただしとりすぎると疲れるので注意を。
 他にも、

・イライラ予防には カルシウム
・バランスをとるには ビタミン
・心臓をしっかり動かすには カリウム

が効果的です。

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モチベーションが下がってしまったら

ー頑張っているのに模試の成績が上がらないといったことからモチベーションが下がってしまった場合、どう気持ちを切り替えていけば良い方向に変わるとお考えですか?

本田先生:自分が今何を欲しているか?を内省してみるのもよいでしょう。マズローの欲求5段階説という考えがあります。

ー下の図のように生理的欲求→安全欲求→所属と愛の欲求→承認欲求→自己実現欲求といった順にそれぞれの段階の欲求を満たすと次の段階へ行く構図になっています。


生理的欲求…空腹、睡眠といった生きる上で必要最低限な欲求。

安全の欲求…安全な住居で暮らし、健康でいたい。

愛と所属の欲求…集団への帰属意識、他者とのつながり、所属感。

承認欲求…周囲から認められ、尊敬されたい。自分に自信を持ちたい。

自己実現の欲求…自分の能力を発揮したい。

例:勉強を夜遅くまで毎日頑張っているのに模試の点数が良くなくてモチベーションが下がってしまった→睡眠が十分とれていないことから生理的欲求が満たされていない

改善策→規則正しい生活、質のよい睡眠を心がけて生理的欲求を満たし、自己実現欲求に向かわせるよう自分をコントロールする

もし、自分のモチベーションが下がってしまったとき、今自分はどの段階にいてどの欲求を満たすと自分のモチベーションを維持することができるかを考えて自己理解を深めることもモチベーションを高まらせるのに効果的です。欲求を自分の意志で叶えていきましょう。

安心するために何をすればよい?

ー受験の日程が近づいてきて、不安を感じている生徒さんも多いと思います。〝不安〟を減らして少しでも安心して受験生活を送るためにできることは何かありますか?

本田先生:安心するためには、「私はできる、できそうだ」という自己効力感が重要です。

ただ、「できるから大丈夫」と根拠のない自信だと結果が伴ってきません。

その自己効力感は根拠のある自己効力感か?ということを問い直して、できる/できないを客観的に分析していきましょう。オススメはテスト分析です。

テスト分析とはテストや模試の結果を受けて、自分の苦手分野やミスしやすい傾向を分析してそれに対する対策をしていくことです。不安をなくすために、前頭葉を使って計画することで実行するアクセルを引きましょう。

また、自分に合っている勉強法か?ということも考えてみるのも効率の良い勉強にオススメです。どの勉強法が自分に合っているのか、ぜひ自分の特性やパターンを理解したうえでの勉強法をしてみましょう。個人の特性によって書いた方が覚えやすい、音読した方が覚えやすいなど暗記方法にも合う/合わないがあります。

ストレス軽減のすゝめその二:安心するために、自分の苦手、できないことを減らして根拠のある自信をつけていく。

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不安な人の話を聞いたら自分も不安になってしまう

ー不安を少しでも減らすことができるように実践できる行動は何かありますか。

本田先生:不安な人からの話やインターネットでもマイナスな情報を見ると脳のミラーニューロンが反応して自分も影響されて不安になってしまいます。

自分が不安になってしまいそうなとき、まずは〝これは誰の不安か?〟を考えて自分と他者の不安を切り離しましょう。そして「自分はやっているから大丈夫」と自己受容すること。自分は自分、他者は他者と切り離すことで心が楽になれます。

明るくて丈夫な人やポジティブな情報に囲まれていると次第に自分の心も晴れやかになっていきますよ。

ストレス軽減のすゝめその三:ポジティブなヒトや情報に触れよう! 

ーありがとうございます。インターネットではネガティブな情報・ポジティブな情報が自分の意志とは関係なしに流れてきます。特に受験期はSNSやオンラインの情報に左右されてしまいますよね。

スマホから離れてリアルな自分に集中してみたり、SNSでは受験に成功して情報発信をしているインフルエンサーだけをフォローしたり、自分の好きなお笑い芸人の動画をみてポジティブなエネルギーを分けてもらったりといった行動が不安の解消に繋がるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。この記事が少しでも受験生の皆さんの心を安定させてくれるものになりましたら幸いです。記事で紹介した知恵を行動に移してみると勉強でベストなパフォーマンスが期待できるかもしれません。ぜひ日常生活で実践してみてください!

みなさんの受験生活がすこしでも心地よいものになりますように🌙


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この記事を書いた人

早稲田大学教育学部・教育心理学専修所属。人の心の動きや行動の背景を知るのが好き。趣味は街散策で、ふらりと路地を曲がって、気づけば知らない景色に出会っていることも。

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