ビジネスシーンで役立つスキルとしてその重要性が広がりつつある「質問力」。その力を学生の頃から身につけることができたら、将来ビジネスパーソンとして周囲と比べて一歩リードできますよね。
今回は、教員が普段の授業を通して、学生の「質問力」を高める方法について、質問力の本質を踏まえつつ、東大教育学部生の碓氷明日香が徹底解説していきます!
質問力とは?
そもそも、質問力とは「質問を通して自分の知りたいことを聞き出しつつ、相手との信頼関係を構築するスキル」のことです。相手の意図をくみとり、現状を客観的に正しく把握して、疑問を解消するために質問を投げかける力を指します。
相手がいることを前提としている力なので、コミュニケーション能力のうちの一つと分類され、ビジネスシーンで役に立つスキルです。
ですが、質問力が役立つのは決してビジネスシーンだけではありません。相手との関係を構築するためのスキルですから、プライベートでも使うことができますし、社会に出る準備をしている学生も、学生生活の中で使えるシーンはたくさんあるのです。
学生が質問力を高めるメリット
では、学生のうちから質問力を高めておくと、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは3つ挙げていきます。
成績に直結する
まず、学生が質問力を高めることは、成績の向上に直結します。「良い質問」ができるようになるだけで、普段の勉強の質がグッと良くなり、テストでも高得点を取れるようになるのです。
そもそも、自分がわかっていない部分を洗い出す分析力がないと「良い質問」はできません。逆に言えば、質問力を身につけたという状態は、「わかっていない部分がわかるようになった」ことを指すのです。勉強において、わかっていない部分を分析し、それを先生に質問したり、その単元に注力することは非常に重要です。これをやることで弱点を補強することができ、成績が上がっていきます。最近はやりの言葉を使うと、「課題解決力」が高まるのです。
また、生徒同士でお互いに「良い質問」をさせることで、さらに授業内容の理解が深まります。つまり、質問力の向上により、学生の授業理解を深め、普段の勉強の質を改善することができるので、学生一人一人の学力向上を測れる、というわけです。
相手への配慮が生まれ、学生間の人間関係が良好に
質問力が身につけば、学生間の会話が相手への配慮を含んだ、より深いものへと変化します。そして、積極的に質問ができるようになれば、そうすることを通して、相手を知ろうとしていることを伝えることができるため、好印象を与えることができます。うまく考えが伝えられない、相手の意図をくみとることができない、といった悩みから解放され、学生が対人関係をうまく構築できるようになるのです。
これは本人にとってはもちろん良いことでしょう。人間関係のゴタゴタに振り回されずに、平穏な学生生活を送ることができます。一方で、このことは教員にとっても大きなメリットなのです。人間関係がうまくいかず、クラス内の雰囲気が悪くなったり、クラスメイト同士が険悪になったりする可能性を減らすことができ、教員としてそれらを解決する負担もなくなります。学生のみならず、教員にとっても良いことと言えるでしょう。
社会で通用する人材に
質問力は上記の通り、本来ビジネスシーンで必要な力として提唱され始めたものです。それを学生のうちに身につけておけば、社会に出た時、ビジネスパーソンとして周りと比べて一歩リードできると思いませんか?
学生たちを社会で通用する人材に育てるためには、やはりコミュニケーション能力を高めることが大事でしょう。学生のうちからできることをやっておく。それだけで、将来グッと楽になるのです。

「良い質問」の特徴とは?
それでは、質問力の中身に入っていきましょう。質問力が高い人の質問は総じて「良い質問」です。では、「良い質問」はどのような特徴を持った質問なのでしょうか?
質問の目的が明確である
一つ目の特徴は「質問の目的が明確である」ことです。学生自身が何がわかっていないか分析できていて、それを相手に伝わりやすい形で投げかけているかどうか、ということですね。
そもそも、学生自身が何を聞きたいか把握していないと、曖昧な質問になってしまい、質問された相手もどう答えればいいか困ってしまいます。また、学生が目的を自覚していても、それが相手に伝わらなければ、意味がありません。目的を明らかにした上で、それをどう表現するか、質問する際の言葉選びも磨いていく必要があるのです。
質問の種類をシーン別で使い分けている
二つ目の特徴は「質問の種類をシーン別で使い分けている」ことです。質問には大きく分けて2種類あります。「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」です。
クローズドクエスチョン:「はい」か「いいえ」で答えられる質問や最初から答えが決まっている質問のこと。例えば、「今日、朝ごはんを食べましたか?」「チョコレートとグミでは、どちらが好きですか?」などが当てはまります。聞きたいことを確実に聞き出せる質問です。
オープンクエスチョン:答えが一つに定まらない、回答者の考えや経験に従って自由に答えることができる質問のこと。例えば、「この映画を観て、どう思いましたか?」「この服を選んだ理由は何ですか?」などが当てはまります。相手の回答が複数存在する可能性もあるので、自分が聞きたいことを確実に聞き出す力が必要です。
この「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」をシーン別に使い分けることができると、質問力が高いと言えます。どのようなシーンでどちらを使うべきかは、実践経験から学ぶ必要があるでしょう。
相手に配慮した質問になっている
三つ目の特徴は「相手に配慮した質問になっている」ことです。自分の中で問いを生み出して、それに対する仮説を立て、自分で検証していく学習方法なら、相手に配慮する必要はありません。しかし、そうでない場合、質問は他人に向けて答えを求めるものになります。
相手のパーソナルな部分に無理やり踏み込んで行ったり、相手の考え・過去の行動を真っ向から否定したりするのは、良い質問から程遠い行為と言えるでしょう。かと言って、配慮しすぎて何も聞けなくなってしまうのは本末転倒なので、これもできるようになるためには実践経験を積むしかなさそうです。
教員が学生の質問力を高めるには?
どのような工夫をすれば、普段の授業の中で、教員が学生の質問力を高める手伝いをすることができるのでしょうか?ここでは、4つの手法をご紹介します。
教員自身が質問力を鍛える
まず、学生の質問力を高めるためには、教員自身の質問力を鍛えておく必要があります。教員として仕事をしている時、プライベートで他者と会話する時など、常にどのような質問をすれば自分の聞きたいことを聞き出しつつ、相手との信頼関係を構築できるか考えるようにしましょう。
質問力を高めるためにはすでに良い質問ができる人のそれを真似るといいとされています。教員が普段から良い質問をするように心がけることで、学生もそれを真似ることができ、学校全体の質問力が総合的に向上するのです。
質問の型を用意する
「良い質問」とされるものには、型が存在します。それを、学生に共有するのです。1授業分の質問を取ってワーク形式で教えるもよし、普段の授業の中でさりげなく取り入れるもよし。今から説明する3つの型に当てはめて、学生が良い質問をするのを手伝いましょう。
①定義を聞く
言葉には一般的な定義がありますが、それをその人がどのように理解し、どのように捉えているかはきちんと聞いてみないことにはわかりません。次のように質問することで、相手の世界の捉え方、思考体系の一端に触れてみようとすることが大事です。
「〇〇という言葉は一般的に〜という意味で使用されていますが、あなたはどのように〇〇という言葉を捉えていますか?」
②5W1Hの中で語られていない情報を聞く
英語の疑問文の先頭に来る言葉、”Who, What, When, Where, Why, How”。
それぞれ「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「なぜ」「どのように」という意味です。これらの頭文字を取ったものが5W1Hですが、これらを意識して質問すると、情報が整理しやすく、満遍なく聞き出すことができるのです。
例)「その時、あなたはなぜ、そうしようと思ったのですか?」
「あなたはそれをどのように説明したのですか?」
③多角的な視点から、意見を問う
これは難易度が高い型ですが、対象となっている人物とはまた別の立場だったらどうなるのか、ということを考えて、それについて意見を聞くと、会話がさらに深まります。
「主人公は確かにそういった心理でこの行動に出たと考えられますが、それによって、この登場人物の心はどう動いたと考えますか?」
授業内で積極的に実践の場を設ける
質問力は前述の通り、コミュニケーション能力の一部です。良い質問を思いつくだけでは意味がありません。実際にそれを相手との会話の中でさらに深めていく必要があるのです。そのため、授業内で教員と学生、もしくは学生同士で質問し合う機会を積極的に設けなければなりません。
と言っても、普段の授業の中にいきなり質問の機会を設けても、学生は発言してくれませんよね。そこで、毎授業の一番最後に、グループワークを取り入れてみるといいかもしれません。今日の授業について、理解したことと理解できなかったことを整理して、わからない部分はグループ内で質問し合ってみましょう、という課題を提示するのです。これなら、教室全体に自分の声を届かせる必要がないので、学生にとっても負担は大きくありません。毎回やっていくうちに、どのような質問をすれば、相手に配慮しながら自分の聞きたいことを聞き出せるか、つかんでくるはずです。
教員がフィードバックを行う
しかし、実践だけでは質問力の向上は難しいです。そこで、授業内の取り組みの後で、どんな質問をしたか、どんな回答をもらってそれに対してさらにどんな質問を重ねたか、ワークシートにまとめてもらい、教員がフィードバックするとさらに効果が出ます。
この際、やはり教員自身に質問力がなければ、学生の質問が良いものかどうか判断できないため、教員一人一人の質問力向上が必須でしょう。そして、仮に学生が悪い質問を繰り返していたとしても、それを否定するのではなく、こうしたらより良い質問になる、という道筋を示してあげることが大事です。そもそも、質問をするのは人によっては非常に勇気のいることで、自信をなくしてしまえば質問を投げかけること自体難しくなってしまうので、その点に注意が必要です。
まとめ
質問力の本質を踏まえて、教員が学生の質問力を高める方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
社会に出たら、どうせ身につけなければならない力です。早いうちから練習しておくが吉でしょう。この記事が学生の質問力向上のため、何らかの形で実践のお役に立てれば幸いです。


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