【レポート】TBS日曜劇場『御上先生』 ドラマ制作トークセッション 〜『御上先生』はどうやってできたのか?〜

TBS日曜劇場『御上先生』 ドラマ制作トークセッション 〜『御上先生』はどうやってできたのか?〜が、2月15日に、東京・ TBS Texh Designe Xにて開催された。

『御上先生』は、国内外で様々な議論がなされてきた教育制度と教育現場の現状を、「考える」ことをテーマに据え、官僚教師と生徒の対話を通した成長を描く新たな学園ドラマだ。 
https://www.tbs.co.jp/mikami_sensei_tbs

「『御上先生』はどうやってできたのか?」と題した本イベントでは、ドラマのプロデューサーを務める飯田和孝氏、チーフ監督の宮崎陽平氏、宮澤涼役の豊田裕大氏、冬木竜一郎役の山下幸輝氏ら4名が登壇。さらに現役高校生が観覧に参加し、ドラマ制作の裏側についてトークセッションが繰り広げられた。隣徳学院3年2組メンバーが体験している作品の新しさ、考えるとは?

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目次

御上先生が生まれたきっかけ

飯田氏は次のように語りました。「私はもともと教師を目指していました。高校生の受験期に『金八先生』を見て、子どもたちが社会に出る手助けをする先生に憧れ、自分も同じようなことをしたいと思ったのです。しかし、放送時期が受験期と重なっていたこともあり、現役では大学に合格できませんでした(笑)。そこで1年間浪人し、教育学部に入学しました。」

そのまま教員を目指す道もありましたが、「社会に出る手助け」を考える中で、次のように思ったといいます。「大学2年生のとき、子どもたちが社会に出る手助けをするのが先生の役割であるならば、自分自身が社会を知らなければできないのではないかと考えました。そこで、教員にはならず、まずは社会を知るために就職しようと決めたのです。」

その後、ドラマ『ドラゴン桜』の制作にも関わり、ドラマ制作の道を歩み始め飯田氏の転機となったのはコロナ禍でした。「企画を考えている最中に、『ONE OK ROCK 18祭』の再放送を見て、18歳の若者たちが輝いている様子がとても印象的だったのです。自分も、見た人のエネルギーになるようなドラマを作れないかと考え始めたのが2020年でした。そこが出発点となり、5年かけて実現した形になります。」

御上先生の”ビジョン”がみえたタイミング

2020年に得たきっかけを土台に、どのようにして御上先生のビジョンが形作られていったのかについて、飯田氏は「頭はクールに、心は熱く」というキーワードを挙げました。

「脚本を担当した詩森さんと何度も対話を重ねる中で、官僚出身の先生という人物像が見えてきました。そこに社会問題を絡めることで、より現代に即した物語にしようと考えたんです。特定の大きなきっかけがあったわけではなく、コロナ禍以降、時代が目まぐるしく変化する中で、その流れに合った内容を模索していたのです。そうした試行錯誤を経て、冷静さと情熱を併せ持つ御上先生のキャラクターが出来上がりました。」

また、詩森氏との話し合いでは、「説教くさくしないこと」も重要なポイントだったといいます。「私のエンタメ作品の経験と、社会問題を得意とする脚本家ならではの視点を融合させることで、自然にメッセージが伝わるよう工夫しました。大人だけのドラマでは伝わらないことも、若者を通すことでより響くものになっていると思います。そうした化学反応が生まれているのかもしれません。」

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映像作りのこだわり

次に話を聞いたのは、チーフ監督の山崎氏。このドラマをどのように視聴者に楽しんでもらうかについて、悩んだといいます。

「働く世代やお年寄りなど、さまざまな世代に分かりやすく伝えることも大切ですが、このドラマがまず届けるべきなのは『若者』だと思いました。若い世代は、配信サイトなどで国内外の高予算で制作されたクオリティの高い映像に慣れています。そのため、作品の質を高めるために、映像のクオリティには特にこだわりましたね。」

劇中では、クラス全体の様子が映し出されています。その広い画を撮るにあたり、細部にまでこだわったといいます。「生徒の鞄や文房具などの小道具はもちろん、制服のデザインや色合い、着崩し方、さらには教室の雰囲気との調和まで細かく調整しました。10月中旬に行われた衣装合わせの際には、座席順も決め、実際に座ってもらいました。キャラクター間の関係性や、どこが仲が良いかなどを考慮した上で細かい調整が行いました。」

これらの工夫を重ねることで、違和感のない映像、進学校らしさやクラスの雰囲気、作品全体のトーンが自然と作り上げられているようです。

役作りの方法

宮澤役の豊田氏は、役作りについて次のように語りました。「宮澤は歯に衣着せぬ性格で、金融などの難しい用語も多い役でした。そこで、YouTubeのコアラ先生の動画を見たりして、用語を勉強し、自分の中に落とし込む作業をしていました。」

冬木役の山下氏は、冬木の内面に注目したといいます。「冬木がなぜビジネスコンテストに出ようとしたのか、その行動の背景を考えました。普段は冷めた様子で御上先生と対峙している冬木ですが、第5話では内に秘めた熱さが見られると思います。」

そして、二人が共通して話していたのは、「生徒たちが芝居に真摯に向き合っている環境」そのものが役作りにつながったという点でした。「生徒役のキャストが、カットが終わるごとにモニターチェックをして表情や照明の映り方を確認するなど、プラスの空気が漂っていました。芝居が好きだという様子が伝わる現場で、お互いの演技を高め合っていましたね。」

生徒それぞれの反応を楽しめるドラマ

役作りについて、山崎氏は次のように語ります。「設定資料など、ベースとなる情報を伝えた上で、『自分なりの解釈をしてみて』と、生徒役のキャストに伝えています。」

まさに御上先生のように、生徒自身が「考える」演出方針。その結果、面白いことが起こったそうです。「たとえば、生徒の誰かが発言しているシーンでも、それを聞いている生徒の反応はさまざまです。発言者の方をしっかり向いている生徒、考え込むような表情を見せる生徒、あまり興味がなさそうな生徒など、それぞれが個性を持って演技をしています。引きのカットでクラス全体を映すと、それぞれのリアクションがしっかりと映り込んでいるので、ぜひ注目してみてください。」

キャスト・スタッフが撮影を通して感じていること

豊田氏は、「御上先生の授業をもっと早く受けたかった」と語ります。「『金融が必修になりました』というセリフがあるのですが、実はこの作品を通して初めて知りました。社会に出てから『これ、学生のときに知りたかった!』と思うことがたくさんあったので、今の高校生がうらやましいですね。御上先生の授業をもっと早い段階で受けたかったと感じました。『パーソナル・イズ・ポリティカル』という考え方も、とても印象に残っています。」

一方、山下氏は「視聴者も“考える”ドラマになっている」と話します。「放送後にSNSをチェックしているのですが、生徒たちが御上先生の授業を通じて考えるように、視聴者の皆さんも彼の言葉からヒントを見つけ、自分なりの解釈をしている様子が伝わってきます。まるで視聴者参加型のドラマになっているようで、とてもやりがいを感じています。」

生徒29人、オーディションの選考基準は?

演技に真摯に向き合う役者が揃った御上先生の現場。生徒29人は全員オーディションで選ばれたといいます。そのオーディションの選考基準について、飯田氏は「ストーリーをしっかり伝えられること」に重点を置いたと語っています。「制作陣の志に賛同できる方に応募してほしいという形で募集を進めました。選考基準でいえば、伝えたいものをストーリーとしてしっかり表現できることを重視していましたね。同じシーンを役を変えて演じてもらったりして、じっくり演技をみて判断しました。」

丁寧に演技を見ながら選ばれたキャストたち。キャストが決まった後は、さらにキャラクターを深める作業が行われたそうです。「ベースのキャラクター設定はすでにありましたが、実際にキャストが決まってから、役者の個性をキャラクターに溶け込ませる作業を行い、より人間味のある生徒が出来上がったと思います。」

撮影が終わりに向かう寂しさ

撮影が進み、ドラマが終わりに近づいていく中で、スタッフやキャストはさまざまな感情を抱いているようです。

豊田氏は「こんなにあっという間だったのは初めて」と振り返ります。「クラス全体でずっと一緒にいる時間が長かったから、刺激も多かったし、考える機会も多かったですね。」

冬木役の山下氏は「なぜ寂しいのか、たくさん考えたから寂しいのかもしれない」と話します。「詩森さんと相談しながら、周りの役者と話しながら、たくさん考えて作ったからこそ、寂しいという気持ちが強いですね。」

飯田氏はプロデューサーの立場から今後の意気込みを話します。「これからを担う俳優たちに前に進んでいってほしいのはもちろん、まずはドラマが終わったとき視聴者のみなさんが『会いたい、寂しい』と思ってもらえるような作品を届けられるよう頑張りたいですね。」

御上先生を通して伝えたいこと

最後に『御上先生』を通して、視聴者に伝えたいことについて、次のように話します。

山下氏は、「今の教育や国の問題について、まだ大人になりきれていない生徒29人が、1人1人考えて、答えを出していきます。そして、それが世の中全体の答えになっていく。生徒たちが必死に考えて成長していく姿をぜひ見てほしいです。」と語り、続けて「今学生で、同じ世代の大人たちも、いろんな世代が見て、これからの未来を変えるきっかけになればいいと思います。第5話の奮闘を楽しみにしていてください!」と期待を込めました。

豊田氏は、「今、目の前に現役の高校生たちがいますが、御上先生の授業を受けるのは、早ければ早いほどいいと思います。まだ第1話から見られるのでぜひ見て欲しいです。主体的に動くことをテーマにしているので、ドラマを通して、見て、考えるきっかけになればと思います。」と話しました。

宮崎氏は、「家族で見るきっかけになるといいですね。私たちも考えながら作り、視聴者も一緒に考えて、明日への活力になる作品にしていきたいです。」とコメントしました。

飯田氏は、「日曜夜9時のドラマは『明日から頑張ろうと思えるエンタメ』がテーマです。ノンフィクションライターが、世の中にあることを届けるにはドラマという形が効果的だと言っているのを聞いたことがあります。大それたことを伝えるのではなく、見た人が自分を考えるきっかけになり、それが周りに対する行動に繋がり、広がっていくことを願っています。」と話しました。

「考える」ことをテーマに据えた『御上先生』の現場では、スタッフもキャストも常に考え続けています。その相乗効果が、ドラマに一層の真実味と誠実さを生み出しているのかもしれません。

カルペ・ディエム告知情報:【無料講座】ワクワクする「探究学習」のつくりかた 〜結局、何をすればいいの?〜

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日程詳細

【日時】2025年3月16日(日) 13:00~14:30
【会場】TKPガーデンシティ渋谷 4Bルーム
〒150-0002 150-0002 東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル
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この記事を書いた人

教育事業や出版事業での取り組みを様々な媒体を通して発信しています。自社メディア「カルペディア」では、「人生を”ちょっと”前のめりに」をテーマに、教育・学習を取り巻く様々な疑問・関心について記事を掲載しています。

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