脱・ただの大きいモニター!電子黒板のうまい使い方3つの原則と教科別アイデア集

ICT教育の導入と電子黒板のうまい活用方法

GIGAスクール構想で導入された電子黒板。「せっかく導入したのに、結局プロジェクター代わりに映像を映すだけで終わってしまっている……」。そんなお悩みはありませんか?

高価な機材なだけに、もっと授業で活かしたい、生徒の学びを深めたいと思ってはいるものの、具体的にどう使えばいいのか分からず、日々の業務に追われて後回しになりがちですよね。

この記事では、そんな先生方のために、電子黒板を「ただのモニター」から「授業の最強パートナー」に変えるための3つの基本原則と、明日からすぐに真似できる教科別の具体的な活用アイデアを、実践例を交えてご紹介します。

あわせて読みたい
【徹底解説】GIGAスクール構想とは?最新の学校教育の変革を知ろう 「GIGAスクール構想」という言葉を皆さんは聞いたことがありますか?近年は多くの学校でタブレット学習が導入されていることを耳にする人も少なくないのではないでしょうか?今回の記事では、GIGAスクール構想によって具体的にどのような取り組みが行われているのか、課題点や今後の展望などについて徹底的に解説していきます!

【2025年9月24日更新】

目次

まずは意識改革!電子黒板を使いこなすための3つの原則

何から手をつければいいんだろう……。

最新のツールを前にして、そう感じるのは自然なことです。しかし、実はたくさんの機能を一度に覚える必要はありません。大切なのは、これまでの「黒板とチョーク」の授業で当たり前だった考え方を、少しだけアップデートすること。ここでは、電子黒板を使いこなすための土台となる「3つの思考の転換」をご紹介します。この原則さえ押さえれば、日々の授業での活用の幅が自然と広がっていきます。

電子黒板を使いこなすコツは、これまでの「板書」の概念を少しだけ変えることです。

原則①:「書く」から「触って動かす」へ

黒板が「書き込む」場所だったのに対し、電子黒板は画像や図形を「タッチして動かせる」のが最大の特徴です。数式、図形、写真などを自由に拡大・縮小・移動させ、ダイナミックな授業展開を意識しましょう。

原則②:「消す」から「保存する」へ

チョークの板書は、スペースがなくなれば消すしかありませんでした。電子黒板なら、書いた内容はすべてデータとして保存できます。授業の最後にPDF化して生徒のタブレットに配布すれば、板書を写すのに必死だった生徒も、議論や思考に集中できます。

原則③:「先生が書く」から「生徒も参加する」へ

生徒のタブレットと連携すれば、電子黒板はクラス全員の思考を集約する「コラボレーション・ハブ」になります。生徒の回答を一覧表示したり、グループの意見をリアルタイムで共有したりと、授業を「全員参加型」に変えることができます。

【教科別】明日から使える!電子黒板アイデアまとめ

基本的な原則がわかったところで、いよいよ実践編です。ここでは、先ほどご紹介した3つの原則が、実際の授業でどのように活かされているのかを、教科別に見ていきましょう。

「自分の担当教科では、どう使えばいいんだろう?」という疑問に答えるべく、弊社も実際に活用している数学・社会・英語・理科の具体的な活用アイデアを集めました。どれも明日からすぐに試せるものばかりですので、ぜひご自身の授業のヒントにしてみてください。

あわせて読みたい
【現役東大生が解説】先生が授業で使える思考ツール一覧!選び方から具体的な活用法まで この記事では、僕自身が使ってきた経験と、大学生としての分析視点を基に、数ある思考ツールを目的別に整理し、それぞれの最適な使い方と授業での活用法を具体的に解説していきます。
あわせて読みたい
学習効果を高める授業方法とは? 今日から使えるポイントを現役東大生が徹底解説! 学習効果とは、授業や課題などを経て、期待される知識やスキルを獲得できたかどうかを指す言葉です。 教育改革がどんどん進む中、うまく学習効果が出ず、どのように授業...

数学

まずは数学での実践例について紹介していきます。

数学は、何か映像を見せることで学習の役にたつわけではないように思えます。しかし、別の問題点を考えると、それを解消するためには電子黒板を活用することが考えられるのです。一体なんでしょうか。

数学の学習においては表や図、そしてグラフを用いて理解することが効果的です。ところが、これまでの黒板に板書をしていく形式だと、一度に多くの表を描いたり、グラフを描いたりするのは時間がかかる上に、消すのも大変な作業です。数式や論理記号だけでは理解しづらい難しい内容になればなるほど、視覚的に理解することは重要ですが、その分必要な板書量も必然的に増えてきます。

電子黒板は数学との相性が抜群です。一般的に電子化することのメリットとして、複製のしやすさ、編集のしやすさが挙げられます。一度描いたグラフを複製したり、部分的に切り取ったりすることが電子黒板では可能になります。さらに、拡大や縮小も自由自在であるため、大きくグラフを描いて生徒にわかりやすく説明した後、答えを書くときには、縮小して参考図として答案の隣に示しておくこともできるのです。

また電子黒板を用いれば、事前に立体図形や複雑な平面図形を準備しておき、それを投影することもできます。発展的な内容を扱うときに、手書きでは表すことが困難な状況や場面であっても事前に準備した画像を投影することで、生徒の理解促進につながる授業を展開することが可能になるのです。

社会

つぎに社会での実践例について紹介していきます。

社会は他の科目に比べて、特に実際の生活との関わりが見えやすい科目だといえるでしょう。地理を学ぶと住んでいる地域の気候が分かるし、歴史を学ぶと、今の自分が生活する国、世界のことがよりクリアに見えてきます。社会では、地図や史料といったビジュアル資料を扱う場面で真価を発揮します。

例えばNHK for Schoolでは、世界各地の場所を映像で見ることができます。これにより、気候とその地域の様子を関連付けて学習することができます。温暖湿潤気候(Cfa)と雨温図をいくら見てもなかなか気候の特徴は覚えられないですよね。

しかし、日本の映像やオーストラリアのシドニー、アメリカのダラスなどの都市部の映像を見ることでCfaの気候区分がおおよそどんな気候で、どの場所が該当するのかを覚えやすくなります。情報通信技術によって、世界の都市の映像が簡単に見せることができるようになっていることを活かした例だと言えるでしょう。

電子黒板ならさらに一歩進んだ活用も可能です。例えば、Google Earthで表示した衛星写真に地形の特徴をリアルタイムで書き込んだり、歴史的な絵画を大きく映して生徒に気づきを書き込ませたりすることで、単なる資料の提示に終わらない、主体的な読解活動を促せます。また、画面分割機能を使えば、異なる時代の地図や二つの国の統計データなどを並べて表示することも簡単です。共通点や相違点をその場で線で結びながら解説すれば、生徒は情報を視覚的に比較・整理でき、より深い考察へと繋げることがで切るでしょう。

理科

つぎに理科の授業における活用法です。特に実験の場面では、器具の正しい使い方や手順を、クラス全員に一度で正確に伝えることが求められます。口頭での説明だけでは限界があるような、複雑な操作や危険を伴う手順を解説する際に、電子黒板は非常に有効だといえるでしょう。

例えば、教科書の実験手順の写真を大きく投影し、注意すべき箇所や操作のコツをその場で直接書き込むことで、生徒の安全意識を視覚的に高めることができます。さらに、実験器具メーカーなどが公開している解説動画を再生し、重要なポイントで一時停止しながら補足説明を加える、といった活用法も考えられます。

こうした工夫によって生徒の理解を促進できるのはもちろん、先生が説明に要していた時間を、個別の生徒への机間指導などに充てることが可能になるのです。

英語

最後は英語の授業における活用法について紹介していきます。英語の授業で電子黒板の活用を狙うとなると、発音の練習動画を授業で提示したり、事前に英文を用意して投影したりする、というアイデアが考えられると思います。

英文を電子黒板に投影すれば、重要な構文や新しい単語をその場でハイライトしたり、生徒から質問が出た箇所に解説を書き足したりと、柔軟な授業展開が可能です。板書を写す手間が省ける分、生徒は英文そのものに集中できます

また、単語カードのデータを画面上で動かして語順整序問題を出題したり、写真を見て英文を作らせたりといった、インタラクティブな文法学習や表現活動にも活用でき、生徒の参加意欲を高めるきっかけになります。

これが電子黒板の真価!授業の質をぐんと上げる便利機能3選

教科別のアイデアを見ていく中で、「それってプロジェクターでもできるのでは?」と感じた場面もあったかもしれません。しかし、電子黒板には、他の機材では真似のできない「ならでは」の強力な機能が備わっています。ここでは、数ある機能の中でも特に、授業の準備時間を短縮し、学習効果を劇的に高める「3つの神機能」を厳選してご紹介します。これらを使いこなすことで、電子黒板が持つ真のポテンシャルを最大限に引き出すことができるでしょう。

電子黒板の便利機能は主に3つです。

①「デジタル教材」×「書き込み」

② タブレット連携

③ 写真や映像に情報を書き込める

それぞれについてみていきましょう。

準備時間を大幅削減!「デジタル教材」×「書き込み」の最強コンボ

これまで、授業で映像資料を見せるときはプロジェクターで、板書をするときは黒板で、と別々のツールを使い分ける必要がありました。電子黒板の最大の強みは、この二つを完全に融合できる点にあります。教科書会社のデジタル教材や地図、Webサイト、動画など、あらゆる情報をスクリーンに映し出し、その上からシームレスに文字や図を書き込めるのです。例えば、数学のグラフに補助線を引いて解説したり、動画を再生し重要な場面で一時停止して注釈を加えたりと、生徒の反応を見ながら柔軟に情報を追加できます。これにより、授業の準備段階で細かな補足資料を全て作り込む必要がなくなり、先生の負担を軽減すると同時に、生徒の「今、ここが分からない」という疑問に即座に対応できる、ライブ感のある授業が実現します。

生徒の思考が飛び交う!「タブレット連携」で双方向授業へ

「発表したい生徒は、黒板まで出てきてください」

これまでの授業では、一度に発表できる生徒の数は限られていました。しかし、生徒一人ひとりのタブレットと連携することで、電子黒板はクラス全体の思考を集約し、可視化する「コラボレーション・ハブ」へと進化します。個々の生徒が考えた意見や解答を、自分の席から電子黒板に送信し、一覧で表示させることが可能です。これにより、特定の一人の意見を聞くだけでなく、複数の解答を並べて比較し、「なぜ考え方が違うのか」をクラス全体で議論することができます。生徒が前に出て板書する時間も不要になるため、授業のテンポが向上し、より多くの生徒が参加できる双方向性豊かな学びの場が生まれるのです。

板書は「消す」から「配る」時代へ。「画面キャプチャ&保存」機能

「ノートを取るのに必死で、肝心な説明を聞き逃してしまった」

これは、多くの生徒が経験する悩みです。電子黒板の画面保存機能は、こうした問題を根本から解決します。先生が授業中に書き込んだ補助線や解説、生徒たちとの議論の過程など、その日の板書を丸ごと画像やPDFデータとして保存できるのです。このデータを授業後に共有すれば、生徒はいつでも授業内容を完璧な形で振り返ることができますし、欠席した生徒へのフォローも万全です。また、先生にとっては、その日の授業展開を記録した「授業ログ」として、次年度の授業改善に役立つ貴重な財産となります。板書がその場で消えてしまう一時的なものではなく、繰り返し学べるデジタル教材へと変わる、画期的な機能と言えるでしょう。

まとめ

今回は、電子黒板を「ただのモニター」から「授業の最強パートナー」に変えるための活用法をご紹介しました。

もちろん、最初からすべてを完璧にこなす必要はありません。まずは、得意な教科のアイデアを1つ試してみる、保存機能だけ使ってみるなど、小さな一歩からで十分です。

電子黒板は、先生の業務負担を軽減し、生徒の知的好奇心を引き出す大きな可能性を秘めたツールです。ぜひこの記事を参考に、先生ご自身のスタイルに合った活用法を見つけて、日々の授業をさらに豊かなものにしてください。

弊社では、このような活用法を紹介するほかに、全国の高校生・中学生むけに講演を行う教育事業をやっています。ぜひご確認ください。


公式サイトにて、カルぺ・ディエムが提供している具体的なサービスを紹介中!

カルペ・ディエムでは、学校や保護者のみなさまが抱える懸念やニーズに応える形で、講演・講座・ワークショップを提案し、それらを実施しております。

生徒の皆さんの大学選びや学部選びのワークショップ、モチベーション向上を目的とした講演、独自の探究学習授業、長期休暇中の学習合宿、難関大学合格を目指した通年プロジェクトなど、さまざまなプランをご用意しております。

私たちの講師は現役東大生で 偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠をはじめ、地域格差や経済格差などの多様な逆境を乗り越えた講師たちが、生徒の皆さんに寄り添って全力でサポートいたします。

ご質問やご相談だけでも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

教育事業や出版事業での取り組みを様々な媒体を通して発信しています。自社メディア「カルペディア」では、「人生を”ちょっと”前のめりに」をテーマに、教育・学習を取り巻く様々な疑問・関心について記事を掲載しています。

目次