デジタルネイティブと呼ばれる人口が増加している中で、教育現場でも様々なデバイスの導入が広まっています。
生徒1人につき1台タブレット端末を導入する。デジタルアーカイブされた過去の歴史的な動画を授業で生徒たちに見せる。既存の黒板とチョークを使った授業とは大きく異なる授業が展開可能となっています。
ICT教育とは
進歩する科学技術を活かした教育のことをICT教育と呼びます。正確にはInformation and Communication Technology、つまり情報通信技術を用いた教育のことをICT教育と呼びます。
様々なメリットがある一方で、ICT教育の導入には1つ困難が伴います。それができることが多すぎてどうやって活用していいのかわからないということです。弊社がさまざまな学校で講義をする際も、先生方からこういったご相談をいただくことがあります。確かにできることは多く、うまく活用すれば生徒の学習効率の上昇や、先生の業務負担の削減が期待できることはいうまでもありません。とはいえ、いざ自分が実際に運用してみようと思うと、「何から始めればよいのか」悩んでしまう場合も多いと思います。
そこで今回は、実際に弊社が講義の際に導入している方法も踏まえ、科目と技術の2つの観点から、具体的な活用方法を提案していきたいと思います。
実践例
それでは早速科目ごとの実践例を見ていきましょう。今回は社会、数学、英語の3科目に注目してお伝えしていきます。
社会
まずは社会での実践例について紹介していきます。
社会は他の科目に比べて、特に実際の生活との関わりが見えやすい科目だといえるでしょう。地理を学ぶと住んでいる地域の気候が分かるし、歴史を学ぶと、今の自分が生活する国、世界のことがよりクリアに見えてきます。だから教科書やノートの記述だけを眺めるよりも、様々な情報に触れることで、単元の内容をより理解できるようになるのは明らかだといえます。そこでICT教育の活用が見えてきます。
例えばNHK for Schoolでは、世界各地の場所を映像で見ることができます。これにより、気候とその地域の様子を関連付けて学習することができます。温暖湿潤気候(Cfa)と雨温図をいくら見てもなかなか気候の特徴は覚えられないですよね。しかし、日本の映像やオーストラリアのシドニー、アメリカのダラスなどの都市部の映像を見ることでCfaの気候区分がおおよそどんな気候で、どの場所が該当するのかを覚えやすくなります。情報通信技術によって、世界の都市の映像が簡単に見せることができるようになっていることを活かした例だと言えるでしょう。
数学
次に数学での実践例について紹介していきます。
先ほどの社会と比べると、数学は必ずしも実際の生活との関わりを示したり、何か映像を見せることで学習の役にたつわけではないように思えます。しかし、別の問題点を考えると、それを解消するためにはICTの力を活用することが考えられるのです。一体なんでしょうか。
数学の学習においては表や図、そしてグラフを用いて理解することが効果的です。ところが、これまでの黒板に板書をしていく形式だと、一度に多くの表を描いたり、グラフを描いたりするのは時間がかかる上に、消すのも大変な作業です。数式や論理記号だけでは理解しづらい難しい内容になればなるほど、視覚的に理解することは重要ですが、その分必要な板書量も必然的に増えてきます。
そんなとき、電子黒板があると非常に便利です。一般的に電子化することのメリットとして、複製のしやすさ、編集のしやすさが挙げられます。一度描いたグラフを複製したり、部分的に切り取ったりすることが電子黒板では可能になります。さらに、拡大や縮小も自由自在であるため、大きくグラフを描いて生徒にわかりやすく説明した後、答えを書くときには、縮小して参考図として答案の隣に示しておくこともできるのです。
また電子黒板を用いれば、事前に立体図形や複雑な平面図形を準備しておき、それを投影することもできます。発展的な内容を扱うときに、手書きでは表すことが困難な状況や場面であっても事前に準備した画像を投影することで、生徒の理解促進につながる授業を展開することが可能になるのです。
英語
最後は英語の授業における活用法について紹介していきます。英語の授業でICTの活用を狙うとなると、発音の練習動画を授業で提示したり、事前に英文を用意しておいて電子黒板で投影したりする、というアイデアが考えられると思います。確かに実際の授業の際にICTの力を活用することが英語の授業ではごく一般的には考えられるかもしれません。
そこで今回紹介したいのは、授業というよりも英語学習における特殊性です。英語という科目はほとんどの学校で、学校の授業とは別に単語テストが行われているはずです。単語テストを出題する目的は様々あると思いますが、最も根本的な目的は、生徒がしっかりと単語を覚えきるためでしょう。ということは、ICTを使って継続的な単語テストの結果から「Aという生徒はまだ覚えきれていない様子だ」とか「Bという生徒はほとんど覚えているが、ある特定の部分だけは抜け漏れがある様子だ」といったような状態が把握できることが必要になってきます。一律に単語テストを課すだけではなく、個別でフォローアップをした方が生徒の学習には効率的だからです。
単語テストの内容や生徒の点数を表計算ツールを用いて管理することが有効になってきます。表計算ツールでは、平均値や偏差のデータ分析はもちろんのこと、各生徒のデータを部分的に抽出し、各生徒の状況を一覧で確認することもできます。表計算ツールを使えば、日常のコミュニケーションによる判断をさらに補強することにつながるのです。
英語は様々な小テストを通じて段階的に英語の理解を深めていく、という授業展開が多いでしょう。今回紹介したような表計算ツールを用いることで、この授業展開がより大きな意味を持つことになるでしょう。
電子黒板のメリット
さて、ここからは数学の実践例でも少しだけ紹介した電子黒板について、そのメリットをご紹介したいと思います。
電子黒板のメリットは主に3つです。
①教育番組を授業で使用することで、準備時間を削減することができる
②生徒のタブレットと連携して双方的なコミュニケーションができる
③写真や映像に情報を書き込める
それぞれについてみていきましょう。
メリット①準備時間を削減できる
これは社会の実践例でも紹介しました。NHK for Schoolは国語、算数(数学)、英語、理科、社会はもちろん、家庭、音楽、体育まで幅広い科目の内容を動画で紹介しています。無料で手軽に見ることができ、さらには細かくチャプターで区切られているため、部分的に活用することも可能です。
他にも、実験器具メーカーや教科書出版会社が実験器具の扱い方をレクチャーする動画を公開していたりと多種多様な動画が公開されています。
これらの活用法は主に2通りです。動画を実際の授業内で見せることによって、生徒の理解度を手軽に高めることができます。もし、理科の実験準備を器具の使い方から説明しようとすると、そのために準備をしなければなりませんし、必要な工数も増えてしまいます。しかし、動画を見せることでその手間を省略することもできますし、動画を見せている間に次の実験の調整を行うこともできます。
他方、授業後に復習教材として生徒にみてきてもらう活用法もあります。例えば授業で伝えた内容が本当にちゃんと定着できているのか、次の授業でテストをする、ということもよく行われているかと思います。教育番組の教材には、動画に付随して、動画内容のまとめ資料が上がっていたり、簡単な確認テストが自分で受けられるようになっているものもあります。授業の中で動画を使い、それをさらに復習として事後でも用いる。教育番組を活用を前提とした授業構成を考えることができるようになると、構成のしやすさや準備にかかる負担も多少削減できるようになるのです。
メリット②生徒のタブレットと連携して使用できる
多くの学校で、1人1台パソコン、またはタブレットが配布されています。探究活動や、プログラミングで用いる場合が多いかもしれません。しかし、電子黒板との併用を考えると、探究活動系以外の授業でのさらなる活用が見えてきます。
どの科目の授業にせよ、先生が一方的に話をして、生徒は授業中一言も発言をしないなどということはほとんどありません。必ずコミュニケーションが発生しています。「じゃあこの問題の答えは?」「3分の32です。」のように問いと答えの場合もあれば、生徒が黒板に来て自分の答案を記入する場合もあるでしょう。そんなとき、生徒が慣れないチョークで文字を書くことに手間取ったり、密集しすぎて順番待ちが発生したりと、ちょっと勿体無い時間が起きる経験がおそらくあるのではないでしょうか。これを解決できるのがまさに生徒の手元にある端末と電子黒板の併用なのです。
まず、生徒が考えたことのメモや記述の過程は手元の端末で記入してもらいます。タブレットであれば手書きで文字を書くことができますので、特にいつもと変わりません。そして、それを教室の前で発表するときには、生徒の端末を接続して、電子黒板に投影すればすぐにどんなことを考えたのかに関する生徒の発表に移ることができます。別の人も同様にして、ケーブルを抜き差しするだけで交代することができるので、時間もかかりません。このように活用すれば、授業中に考えたことを全体に向けて発表するためにかかる時間が少なくなり、同じ時間のなかでより様々な生徒に発表する機会を与えることができるのです。
メリット③写真や映像にリアルタイムで書き込める
最後のメリットに移ります。実は、上記2つのメリットは、正直電子黒板特有のメリットではありませんでした。番組を流すことはそれこそ生徒の手元の端末でも可能です。また、別端末の投影であれば、わざわざ電子黒板に頼らずとも、プロジェクターやモニターを使って投影すれば十分です。電子黒板特有の活用法こそが、投影した画像や映像にリアルタイムで情報を書き込める、という点なのです。
例えば、数学や英語の授業で、あらかじめスライドを用意しておいて、授業を進めることを考えてみましょう。もちろん授業の構成はすでに決まっていますから、特に支障がなければ準備してきたスライドで事足りるでしょう。しかし、思わぬところで生徒の理解が追いつかなかったり、生徒の鋭い洞察によって発展的な内容に脱線したい場合もありますよね。そんなとき、その場でスライドを編集するのは時間がかかりすぎますし、何より生徒に伝えるための授業のはずなのに、先生の作業時間になってしまい本末転倒です。だからこそ、その場で画像や動画に手書きで補足ができる電子黒板が有効になるのです。大まかな流れはスライドで、生徒からの質問や理解に合わせた補足は手書きで、と用途に合わせて、スライドと手書きの利点を掛け合わせて授業を進めることができるのです。電子黒板でしかできない組み合わせによって、より授業のしやすさが向上するのです。
まとめ
今回はICT教育の活用例をいくつかご紹介しました。やはり、ICT教育は新たな設備の導入コスト、通信サービスの安定的な提供、生徒の利用に際してのトラブルなど、課題が多いのも現状です。しかし、活用法を学び、実際に授業の場で試していくことでしかより良い活用法は見つからないのではないでしょうか。そのためにも、探究活動といったような特定の場面だけではなく、今回紹介した通常の授業などの様々な場面での活用法を踏まえて、さらに活用していただければと思います!
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