武蔵野大学高等学校 アカデミックマインド育成講座 第4回

カルぺ・ディエム講師の橋本匠講師(教育学部3年生)と縹峻介講師(理学部4年生)が、2023年6月23日に武蔵野大学高等学校の2年生を対象に「アカデミックマインド育成講座」の4回目講座を行いました。

アカデミックマインド育成講座とは?
AIなどさまざまな技術が発達する中、これからの世代に求められるのが「思考力」です。共通テストや大学入試でも「自分で考える力」が試されるようになっています。
本講座では、現役東大生と一緒に「身の回りにあふれる疑問」と「五教科の勉強」を結びつけた課題に取り組み、自ら問いを立て、仮説を作り、検証する一連の思考法「アカデミックマインド」の獲得を目指します。 勉強がより楽しく、身近な存在になるだけではなく、獲得した思考法を大学受験の問題に応用していく講座です。

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本記事では、講演の様子をメディア事業部の縹峻介がレポートします!

目次

良く回るコマを作るには?

第4回講座の前半での目的は「仮説を立て、それを適切に検証できる実験内容を考える」こと。皆さんであれば、次のお題に対してどのような仮説を立てますか?

「良く回るコマを作るには?」

まずは、帰納的に推察ができるよう、仮説を考える前に各自コマで遊んで、気づいたことをワークシートに書き出してもらいました。

ワークシートには

  • 重心の位置を変える
  • 金属や木材など材質を変える
  • 軸を安定させる

などなど、気づいたことをもとに立てた仮説が書かれています。

次に、仮説を適切に検証する実験内容を考えました。

「重心の位置を変えると良く回るコマを作れる」と考えた班は、重心の違う複数のコマを用意して回すことを提案し、「金属や木材など材質を変えると良く回るコマを作れる」と考えた班は、色んな素材でコマを作って回すという実験方法を考えました。

しかし、はたしてこれは本当に「仮説を適切に検証する実験」になっているのでしょうか?

例えば「重心の位置を変える」と言っても、

課題1.重心の変化に伴って、全体の質量も変化する場合、結果の有意差は本当に重心変化に起因していると言えるのか?

課題2.市販のコマを買って検証する場合、コマに依って素材や形状が違う。では「重心の違うコマ」はどのようにあてがうのか。

課題3.そもそもコマの重心はどのように見極められるのか。

課題4.コマを回す際の再現性はどのように担保するか。

など、様々な解決すべき課題が考えられます。

課題1は端的に言えば、実験に即しては対照実験の形式を取るべきである、という原理的な問題であり、一方課題2,3は、実験を実際に実行する際に障壁となる事柄です。

また、課題4は、報告書を書く際に最も注意しないといけないポイントで、再現性がない報告というのは、どうしても自分達がしてきたことに信憑性を持たせられなくなってしまいます。

このように、突き詰めて考えると、仮説を適切に検証するというのは、とても難しいのです。今回の講座では、自分で実際に実証をするところまでは扱いませんでしたが、実際に自分で何かの実験や調査をする際に役立てて貰えると嬉しいです。

生徒がコマで遊びながら気づいたことをタブレット端末に書く様子

東大生が幼少期にしていた習い事を知れば頭が良くなる?

後半では、ほかの身近な例から仮説を立てて、それについてみんなで考えながら検証してみました。以下が、実際に扱った問いと仮説です。

問い : 現役で東京大学に入るためには、小学校時代にどのような習い事をすべきだろうか?
仮説 : ピアノ教室に小学1年生の時から通う。

そして、この仮説に対して、このような検証方法を考えたとします。

検証方法 : 無作為に選んだ東大生に対して、ピアノを習っていたかどうかを聞く。

実際に、講義の前に東大生100人に対しアンケートで、以下の質問をしました。

  • 経験したことのある習い事はなんですか?
  • ピアノを習っていた場合、いつから習っていましたか?

すると、結果は、46人がピアノを習っていた経験があり、

  • 0-2歳に始めた・・・3人
  • 3-5歳に始めた・・・27人
  • 小学校低学年に始めた・・・14人
  • 小学校高学年に始めた・・・2人

という結果になったのです。

講師が講義をしている様子

さて、ここまで得た情報で、実際に「ピアノ教室に小学1年生の時から通う」と東大に現役で受かると言えるのでしょうか。
これも、結果を冷静に解釈しないといけません。

例えば

  • 100人中46人がピアノを習っているのは、平均より多いのか?少ないのか?
  • たまたまその100人の中にピアノを習っていた人が多かった/少なかった可能性はないか?
  • 検証で見つけた相関は、疑似相関(2つの事象に因果関係がないのに、見えない要因によって因果関係があるかのように推測されること)ではないのか?

など、批判的な見方をすると、このアンケートだけで「東大生は、ピアノを習っていた人が多い」と判断するのは早計であると考えられます。

少し詳細に立ち入ると、統計学の言葉で「東大生は、ピアノを習っていた人が多い」という仮説は、帰無仮説(きむかせつ)といいます。この仮説を真であると決定付けるためには、何%以上の確率で得た結果を信頼するかの判断基準(有意水準)を設定しなければなりません。この基準を満たせているか満たせていないか検証を行い、そこではじめてこの仮説を採択するか棄却するかが決定できるのです。

普段何気なく「Aな人はBしてることが多いなぁ」とぼんやり考えることがあっても、それを仮説検証する場合には、このような厳密なフローを踏まないといけないのですね。

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この記事を書いた人

東京大学理学部物理学科に所属。高校時代に生徒会長をした時の楽しさが忘れられず、学祭やイベントの運営に携わって仕事をすることが、至極の楽しみ。カルぺ・ディエムでは出版編集部に所属し、よりクオリティの髙い書籍を出すことを意識している。趣味はピアノとゲームとスラック。

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