カルペ・ディエム代表の西岡壱誠が2023年4月1日、4月8日「西岡壱誠✖︎現役東大生 偏差値が低い人間がどういう声掛けで東大に合格したのか」という題目で、約50人の方にセミナーを行いました。
2時間に及ぶセミナーでは、西岡壱誠の経験なども交えながら、事前に頂いた質問に解答するほか、勉強する意味についても触れました。
本記事では、このセミナーの様子を布施川天馬がレポートします!
子ども達は「今」ではなく「未来」に絶望している。
まず、西岡講師は梯子を例にして話し始めました。「10段のはしごを想像してみてください。下段は最悪の生活を、冗談は理想の生活を表しているとしたとき、今のあなたは何段目にいますか?そして、5年後のあなたは何段目にいると思いますか?」会場に来ていた人々も真剣な面持ちで考え始めます。ある人は「自分はいま3段目くらいにいるけど、この後は7段目くらいまで登るつもりだ」と答えていました。未来に期待を持った回答です。
いったいどうして西岡講師はこの質問をしたのか?それは「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の調査によると、「”今”の人生の満足度はどれくらいなのか?」という質問に関係しています。先の質問において、梯子の段数とは、すなわち幸福度のことを表していました。「いまは梯子の何段目?」という問いは「現状満足しているか?」という問いに、「5年後はどこにいるか?」という問いは「未来に対してどこまで希望を持っているか」という問いにそれぞれ対応しています。
「現状満足しているか?」という問いに対する日本人の平均的な回答は2005年で27位でした。しかし、これが2020年には61位まで落ち込んでおり、そして「”5年後”の人生の満足度はどれくらいなのか?」はなんと70位から122位まで落ち込んでいるのだそうです。。これは、「日本人全体の現状に対する満足度と、未来に対する期待感が落ち込んでいる」ということを表しています。さらにこの数字は、世界的にみても低い数字である上に、若者の方がランキングが低くなる傾向にあると西岡講師は語りました。すなわち、日本人の若者は、いまではなく未来に絶望しているのです。
「子ども達は未来に希望が持てない状態になっている」という事実に、参加者の方々も驚きが隠せない様子でした。仮に「勉強は将来に対する投資だ」と教えられたとしても、未来が真っ暗なら投資なんかする気も起きないでしょう。だからこそ、やる気にならない。」いくら親に「将来のために勉強するのよ!」と言われても響かないのです。
だからこそ、まずは、「未来というものは楽しいんだよ」ということを見せるべきであると西岡講師は断言します。前提として、親であれ、先生であれ、子どもに関わる大人たちは、まず「未来は楽しいんだよ」「暗くないんだよ」ということをしっかり伝えていかなくてはならないのです。
授業は聞くもの?受けるもの?
ここから西岡講師は英語における「授業を受ける」という表現について話し始めます。みなさまは「授業を受ける」という表現を英語でどのように表すかご存じでしょうか?「授業を“聞く”」から“listen to the class”や「授業を“受ける”」で“accept the class”など思われる方もいらっしゃるかとは思います。しかし、これらは正しくありません。、「授業を受ける」を英語で表すと“take a class”という言い方になるんです。。
“take”とは「取る」という意味の動詞。つまり、授業というのは本来、先生や教科書に向かって自ら「取りに行く」ものなのだ、と西岡講師は結びます。受け身な態度で油断せず、自分でしっかりと相手に矢印を向け、授業を通じて何か情報を取りに行く姿勢でいかなくては、成績があがっていかないのです。。
それでは、「勉強に対してのイメージ」はどうでしょうか?西岡講師曰く今の子達は、「手のひらを上に向けて待っているような子が多い」と言います。「勉強は先生から『教えてもらう』もの」、「学校では授業を『受ける』もの」「教科書や参考書を読んで成績が『上がったらいいな』」というイメージを持ってる子が、非常に多いというのです。
しかし、これではいつまでたっても成績なんて上がりません。先ほどの例でいえば、勉強とは、手のひらを返して掴みにいくモノです。「勉強は先生から『学びとる』もの」「学校では授業を『取りにいく』もの」「教科書や参考書を読んで成績を『上げる』もの」というイメージを持たなくては、成績など一生あがりようもないのです。。この言葉には、会場の方も虚を突かれたようでした。
さらに、と西岡講師は続けます。彼が「東大に入って一番驚いたこと」は、授業が終わると、多くの学生が、先生のところに質問に行くということでした。頭がいいはずの東大生が、「ここがわかりませんでした」「ここは、どういうことですか?」と、自分の疑問を教授に次々にぶつけている様子に驚かされたというのです。。そして、それを見ていて彼が考えたのは「偏差値35だった頃の自分には、できないことも、わからないこともいっぱいあったけれど、先生のところに質問に行ったことは1回もなかったな」ということでした。頭がよくなかった頃の西岡講師は、自分から授業を取りに行くという発想がなかったのです。それで頭がよくなるわけがない。
だからこそ、自分から矢印を向ける。自分から取りに行くことが大事なのだ、と西岡講師は説きました。
それでは、そのためには何が必要なのか?
STEP1 「楽しさ」
「まず、勉強自体が楽しくなくてはいけません。勉強が楽しいものだと、もっと多くの人に知ってもらう必要があります」
そう言った後に、会場の方へ「新宿が世界一乗降客数が多い駅だって知っていますか?どうして世界一乗降客数が多いのでしょうか?」という質問を投げかけました。一見すると単純なこの質問ですが、参加者はみなさん唸って考えられていました。このような質問をされると、多くの生徒は「日本の人口が多いから」と答えるのだそうです。しかし、本当にそれで正しいのでしょうか?その答え方ではどうして「上野」や「渋谷」がその答えにならないのか、という問に答えられません。この質問に関しては、もっと深く考えるともっと面白いことがあるのです。
まず、地理的な視点で考えてみましょう。日本の人口は世界的には上から10番目で、他にもっと人口が多い国もありますし、「日本は人口が多いから」という答えでは、少し違和感がありますよね。それでは、新宿駅はどのような場所にあるのでしょうか。東京の地図を見ると、新宿駅は東京の東側にあります。京王線等を使って、調布や府中などの東京の西の方から、千代田区や文京区と言ったオフィス街に行くターミナル駅としての役割があるということが分かります。このように場所等を考えると色々見えてきて面白いですよね。
さらに、実は、この問題は国語的な視点でも見れます。「乗降客数」という言葉に注目してみると、乗客ではなく「乗降客数」である点に気が付くと思います。これは乗る人と降りる人が多い駅と考えられます。乗る人と降りる人が多いということは、乗り換えの人が多いとも考えられますよね。
そう、新宿は、東京の西と東を一点で繋ぐターミナルであり、東京メトロやJR、京王線など多くの路線が入り乱れるように入ってくる駅であるからこそ、多くの人が乗り換えに使っている駅なのです。だからこそ、世界中のどんなに人口が多い駅よりも、日本の新宿駅が、世界で一番乗降客数が多い駅になったのでした。
こういった世の中の楽しさみたいなものが分かってくると、勉強が「楽しくなる」んです。こういったところまで学びの楽しさを得ることができていない子が大多数だとは思いますが、本来は、勉強って楽しいことなんです。。
勉強とは身の回りのことを知るため、そして活かすためにやるもの。学べば学ぶほど、世の中のことが理解でき、活用できるようになるもの。つまり、知ることは楽しいことだよ。という意識を持つ頃が重要だと西岡講師は説きました。
STEP2 「自立」
楽しさを学んだあとにやってくるのが「自立」です。たとえば、生徒や子どもたちから「この問題が分からない!」と聞かれたらどうするのが正解でしょうか?
もちろん、解き方を教えてあげることも、一つの方法ではあります。しかし、その場合では、もちろん生徒は解けるようにはなりますが、解けるようになるのはその問題だけ。これでは、問題に突き当たるたびに教えてもらわなくてはいけなくなりますし、いくら時間があっても足りません。
次に何か問題があった時に、誰かから教えてもらわなくても、解けるようになってもらった方が良いですよね。
「川の前でお腹を空かせてる人がいます。あなたの目の前には釣竿とエサがあります。あなたは魚を釣ってあげますか?それとも釣り方を教えてあげますか?」という有名な問いがあります。
ここで、例えば魚を釣ってあげたとします。それだと自分が居なくなるとその人はまたお腹を空かせてしまいますよね。ですから、この問題の本来の答えは「魚の釣り方」を教えてあげるということが正解でした。そうすれば、釣り人がいなくなっても、その人は自力で魚を釣ることができるようになるからです。
しかし、今の世の中では「魚の釣り方」すら教えなくて良いと西岡講師は続けます。魚を釣った方が良いんだよと伝え、魚の釣り方の調べ方を、調べる方法を教えてあげる。それを一緒にやってあげる。それで十分だというのです。これには、深くうなずいている参加者の方もいらっしゃいました。
STEP3 「自走」
勉強について「楽しさを知る」「自立をする」ときたら、最後に来るのが「自走」。自力で走り続ける能力を身に着けることが必要だと述べました。
先日、西岡講師は、ある東北の学校で東大志望の生徒達に、全校生徒に対するプレゼンをしてもらったといいます。。その内容は「自分たちが東大を目指す」ということに加えて、「この1年間で自分たちは何を学んだのか?」「自分の考えがどう変わったのか?」
「プログラムを受けて、各自がこの一年で大事だと思ったこと。」
というものでした。
いったいどうしてこんなことをしたのか?その目的の一つは、「自分達が東大に行くと宣言すること」でした。コミュニティのためです。
西岡講師は、「自走」とは何か?という質問に対して、コミュニティであるという定義を述べました。。コミュニティとは、「自分達がいる環境を自分達で設計する」ということ。
やっぱり1人で何かするというのは、難しい。1人の力ではできないこともたくさんあります。しかし、多くの人の力を合わせれば、たくさんのことを成し遂げられる。その経験からの言葉でした。。
実際にそれが起きた例として、西岡講師は、自身の体験談を話し始めました。彼が現役、一浪の時は友達は居なかったといいます。ですが、まったく東大には受かる気配がなく、行き詰っていました。そうして、彼が二浪になった時のことです。「このまま自分だけで勉強するのではダメだ。みんなでやろう」と思いなおし、友人にノートを見せてもらい、勉強を教え合いました。そうして、成績が急上昇した西岡講師は、見事合格することができたのでした。
さらに、西岡講師は自身がかつて世話になった佐渡島庸平氏の「自分や誰かが思った『ここまで』という線を飛び越えて、とにかくやりすぎる。そして、それをさらけ出して巻き込んでいく」という言葉を引用しました。そうして、「こういうことができるようになると、自走できるようになる」と締めました。
質疑応答
この後、セミナーは「質疑応答」の時間になりました。これは、事前に参加者の方からもらっていた質問に対して、西岡講師と、共に同席していた現役東大生講師がそれぞれ答えていく形で進行しました。
参加者の方から寄せられた様々な悩みに対して、明快に答えを返していく様子が参加者の方の心にも刺さったようで、会場からは時折ため息のような感嘆が聞こえました。
参加した方からの声
・3STEPの考え方、「楽しい、自立、自走」の考え方は非常に役に立つと思った。
・学習するのに楽しく、そして意図を持って取り組む為にはという点で、構造が分かりやすく、そしてその具体例があり、実践に移せそうなものばかりでした。
・登壇者お二人の発言内容が素晴らしかったため。非常に満足しました。
・今まで自分の行ってきた勉強法や習得法が間違っては居ないということは再確認出来た。しかし、考え方が全く違うということがわかった。今後はそれを活用しつつ自分を向上させることを意識していこうと思います。
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