みなさんは、「鉄緑会」という塾の名前を聞いたことがありますか? ネットで「東大受験 塾」などと検索すると間違いなく名前が出てくる学習塾で、非常に早いカリキュラムが特徴的だとされています。
鉄緑会の進学実績を支えているカリキュラムの特徴とは? 鉄緑会に通っていない人でも、鉄緑会の勉強法を取り入れることで成績は伸びるのか?
今回は、実際に中学・高校の6年間鉄緑会に通い、東大に現役で合格した筆者が、鉄緑会のカリキュラムの特徴と自分たちの勉強法に取り入れるコツをご紹介します!
鉄緑会ってどういうところ?
鉄緑会は、主に中高一貫校の生徒を対象にした、東京大学の受験指導を専門とする学習塾です。変わった名前ですが、東大医学部の同窓会である「鉄門倶楽部」と、東大法学部の自治会である「緑会」から一文字ずつ取って名付けられたもので、その名の通り設立当初から東大受験を専門に掲げていました。
「東京校」と「大阪校」の2拠点があり、東京校だけでも東京大学に482名、国公立医学部に385名と、圧倒的な進学実績を誇っています。
先取りが鍵!?カリキュラムはどうなの?
そもそも科目数が少ない
鉄緑会では中学1年生〜高校1年生頃まで、英語・数学(1A・2B)の2科目のみを開講しています。これは、高校生になって文理選択をするタイミングで社会科や理科・数3の勉強が本格的に始まるので、それまでに共通の数学・英語を完成させておくことで、選択科目に集中できる素地を作ろうという考え方に基づいています。
科目数を絞ることで、数学と英語に重点的に時間をかけることができるというわけです。
中学生で高校範囲が終わる?
鉄緑会の特徴として、カリキュラムが非常に速いスピードで進むということが挙げられます。
私が在籍していた頃の話ですが、数学でいうと、中学1年生の1年間で中学範囲の学習が終わります。学校では3年間かけて学習する範囲を1年間で終わらせるわけですから、単純計算で3倍のスピードです。
さらに、中学2〜3年生の2年間で、高校範囲の学習が終わります。こちらも単純計算で1.5倍のスピードということになり、中学3年生の時点で、大学受験に必要な知識は全て出揃っているという状態となります。
高校生は「2周目」「3周目」
もちろん、鉄緑会の生徒といえども人間ですから、一回教わっただけで全ての知識が身につくわけではありません。凄まじいスピードでカリキュラムが進むぶん、取りこぼしてしまった知識やいまいち理解していないまま終わってしまった範囲が発生するリスクがあります。そこで、鉄緑会では、高校1年生で入試の範囲の「2周目」を学習します。つまり、中学3年間をかけて学習した大学受験の範囲の全てを、1年間かけてもう一度頭から学び直すというわけです。そうすることで、記憶が薄れていた部分を学び直したり、一度習ったという前提でさらに発展的な学習をしたりすることができます。
高校2年生になると、さらに「3周目」の学習が始まります。同じ範囲を3回目ともなると、生徒の理解も進んでいるので、今度は実際の入試問題をふまえ、より実践的な学習となります。並行して入試形式の演習も行われます。また、この頃から社会科や理科などの講義が開講されるので、数学・英語は理解できている状態を維持することが目標となり、勉強時間の多くを選択科目の学習に注ぎ込むます。
こうして中学1年生〜高校2年生までの5年間で受験範囲をすでに3周している鉄緑会の生徒たちは、高校3年生の1年間を入試本番に向けた準備の時間に使うことができるというわけです。
自分の勉強に生かせる勉強法
さて、ここまでご紹介してきたように、鉄緑会では6年間で大学入試の範囲を圧倒的な速度感で繰り返し学習し、それが圧倒的な合格実績につながっているといえます。
鉄緑会のカリキュラムから着想を得た、入試範囲を周回する勉強法をご紹介します!
「1周目」を早めに終わらせよう
鉄緑会のカリキュラムの大きな特徴として、「1周目を早く終わらせている」ことがあります。皆さんもお分かりのように、一度習っただけでその範囲を完璧に理解し、問題が完璧に解けるようになるというのは現実的ではありません。やはり学習というのは復習を前提にするべきです。ですから、中学3年生でとは言わずとも、なるべく早く試験範囲全体の学習を終わらせて復習に時間をかけた方が知識は定着しやすいといえます。
学校にもよりますが、学校のカリキュラムに従って学習を進めた場合、受験の3カ月前になってようやく入試範囲全体の学習が終わるというような場合もあります。それでは復習が間に合わないと思ったら、自分で先に教科書を読み進めたり、参考書などを買って学習を進めたりして、なるべく早めに入試範囲の「1周目」を終わらせてしまいましょう。そうすれば、学校の授業を「2周目」の復習として受けることができます。
じっくりより、さらっと周回
「1周目」の学習でひととおりの知識をインプットしたら、次は復習をかねて「2周目」の学習に入ります。このとき意識したいのは、ひとつひとつにじっくり時間をかけて復習するのではなく、さらっと全体を見直すということです。
人間の記憶には、時間をかけて一度でじっくり覚えようとしたものよりも、短時間でも何度も見たものの方が記憶に残りやすいという特性があります。一度学習したことを思い出す、というくらいの気持ちでさらっと全体を復習しましょう。そうすると、意外と忘れていたことを思い出したり、最初に学んだときには気づけなかったことに気づけたりして、得るものがあるはずです。
2周目が終わったら、次は3周目です。基本的な知識が身についてきたと感じたら、さらに発展的に、実際の入試問題ではどういうふうに出題されているのかな?という視点で学習してみましょう。そうすることで、入試範囲のインプットを、過去問演習ひいては入試本番というアウトプットへとスムーズに繋げていくことができます。
おわりに
鉄緑会の圧倒的な進学実績を見ると、生徒に何か特殊な訓練を受けさせているのではないかと想像してしまいがちですが、実際に行われていることはとてもシンプルです。ただ、早い段階で入試範囲の学習を終わらせ、2周目、3周目と時間をかけて何度も取り組んで復習しているのです。
この記事では、鉄緑会のカリキュラムを参考にした勉強法をご紹介しました。ぜひ参考にしてみてください!
鉄緑会Q&Aコーナー!
- 鉄緑会ってどういうところ?
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私が学生の頃は1学年600人くらいでしたが、数年で1000人以上になりましたね。
拠点は代々木にある本校と、関西校の2拠点になります。代々木は数年前に建て直しましたが、それでも生徒数が増えたために周辺にテナントを借りていました。
基本的には数学と英語の2科目で、高2頃から理科社会国語の講義を受講することができます。
- 講師について
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社員さんもいますが、講師の大半は現役の東大生です。私の場合は中高6年間鉄緑会に通い、そのまま面接や採用試験を受けて大学1年制の4月から講師として働いていました。そういうパターンの東大生が多いですが、そうでない方もいました。
中高生の生徒にとって今の自分の延長線上にあるすぐ先の将来像を見せること、より新しい受験の情報やノウハウを持っていること、ティーンエイジャーの難しい時期に親や先生といった「大人」よりも身近な先輩・お兄さん的な立ち位置にいること、などが目的であるように感じました。
倫理研修なども行われるので、単なるアルバイトという感覚ではなく講師の仕事に取り組んでいる人ばかりであったように思います。
- 生徒について
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鉄緑会は入塾に制限があり、難関中学・高校の生徒を対象にしている。
まず、基本的な理解が非常に早く、1教えたら10わかって勝手にその先の問題を解いているような子も多かったので。
もちろん、早すぎてついていけない子が出る危険性はあるので、そこは講師が目を配らせてフォローしていく部分ではあります。
中には、宿題の中に自作の問題を作ってきて、講師にチャレンジするような生徒もいます。もうヒヤヒヤですが、そこは講師としての威厳を見せるために頑張ります。
- カリキュラムについて
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これも私が教えていた頃の情報ですが、とにかくスピードが速いのが特徴です。
まず、中1で中学範囲を終わらせます、
中23で高校範囲を終わらせます。
高1で全体範囲をもう1周、高2では入試を想定した演習も行いつつもう1周します。高3では毎週のように本番形式の演習を行い、入試本番に備えた練習を行いました。
- カリキュラムをどう思うか
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知識を覚えただけでは試験で点は取れません。実戦に即した演習を積むことで、本番に使える力が身につくと思います。
そういう意味で、必要な情報のインプットを中学生のうちに終わらせてしまい、高校の3年間で繰り返し確認しつつアウトプットの練習を積むカリキュラムは、とても効率がいいと感じています。
- 宿題は?
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そこまで多くないという印象ですが、これは課される側の要領にもよるので。ただ、鉄緑会は勉強をすることに抵抗が少ない生徒が多いので、そう感じているだけかも。でも、実際に経験した身としては、過度な負担だったとは全く思いません。
- 鉄緑会じゃなくてもできること
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自分の学校のカリキュラムが早くなくても、インプットが遅いのであれば先に自分で参考書などを買ったり教科書を先読みしたりしてインプットを済ませてしまい、学校の授業を「2周め」「復習」としてしまえばいい。また、アウトプットの練習はインプットと並行して進められるので、なるべく早い段階から、演習に取り組んだ方がいい。
公式サイトにて、カルぺ・ディエムが提供している具体的なサービスを紹介中!
カルペ・ディエムでは、学校や保護者のみなさまが抱える懸念やニーズに応える形で、講演・講座・ワークショップを提案し、それらを実施しております。
生徒の皆さんの大学選びや学部選びのワークショップ、モチベーション向上を目的とした講演、独自の探究学習授業、長期休暇中の学習合宿、難関大学合格を目指した通年プロジェクトなど、さまざまなプランをご用意しております。
私たちの講師は現役東大生で 偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠をはじめ、地域格差や経済格差などの多様な逆境を乗り越えた講師たちが、生徒の皆さんに寄り添って全力でサポートいたします。
ご質問やご相談だけでも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。