英語の授業で探究学習を行う方法とは? 授業例や探究テーマ例を東大生が解説

近年、学校教育では、「主体的・対話的で深い学び」を実現する方法として、探究学習が重視されています。こうした探究的な学びは、総合的な探究の時間だけでなく、各教科の授業にも取り入れることが可能です。

この記事では、英語の授業に探究学習を取り入れる際の基本的な考え方から、メリット、具体的な授業例や探究テーマ例に至るまで、東大教育学部生ライターの碓氷明日香が徹底解説します。

目次

探究学習とは? 英語の授業に取り入れる前に押さえたい基本

そもそも、探究学習とは一体どのような学習のことを指すのでしょうか。まずは英語の授業に取り入れる前に押さえておきたいポイントを簡単に説明します。

探究学習の基本的なプロセス

探究学習とは、課題や問いを出発点として、情報を集めたり分析したりしながら理解を深めていく学習方法のことです。一般的には、次のようなプロセスで進められます。

まず、生徒自身が関心のあるテーマや疑問から「問い」を設定。次に、その問いを解決するために資料やデータを調べて情報を収集します。その後、集めた情報を整理・分析し、自分なりの考えや結論をまとめていく。最後に、レポートやプレゼンテーションなどの形で成果を発表します。

このように、問いの設定から調査、分析、発表までの一連の過程を通して学びを深めていく点が、探究学習の特徴です。

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調べ学習との違い

探究学習は一見、調べ学習と似ているように見えるかもしれません。

しかし、この2つは本質的に異なります。調べ学習は、与えられたテーマについて資料を調べ、情報をまとめることが中心となる学習です。一方、探究学習では、自分で問いを立て、その問いを解決するために情報を集めて分析し、考えを深めていきます。

つまり、単に情報を集めて整理するだけでなく、「なぜそうなるのか」「どのような解決策があるのか」といった視点で考察を行う点が、探究学習の大きな特徴なのです。

探究学習を通して身につく力

探究学習を通して、さまざまな力を身につけることができます。

代表的なものが、課題を見つけて問いを立てる力情報を集めて整理・分析する力、そして自分の考えをまとめて発信する力の3つです。

また、調べた内容をもとに自分の意見を考えたり、他者と議論したりする中で、思考力や表現力、主体的に学ぶ姿勢も育まれます。こうした力は、教科の学習だけでなく、変化に富む新時代を生き抜くうえで必須です。

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英語の授業で探究学習を行うメリット

では、英語の授業の中で探究学習を行うメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、3つのメリットを挙げていきます。

メリットその1:英語を「実践的に使う」練習になる

探究学習を英語の授業に取り入れることで、英語を実際に使いながら学ぶ機会が圧倒的に増えます。調査の過程で英語の資料を読むことで、生きた英文に触れることができるうえ、考えたことを英語で発表することで、スピーキング力やアドリブ力を身につけることも可能です。

つまり、探究学習を通して、「読む・書く・話す・聴く」の4技能をバランスよく実践レベルに引き上げることができます。

メリットその2:英語資料を使うことで新たな視点を得られる

探究学習では、多様な資料に触れながら課題について理解を深めることが重要です。その中で、英語の資料を活用すると、日本語の情報だけでは得られない視点や考え方に触れられます。これは大きなメリットと言えるでしょう。

例えば、同じ社会問題でも国や文化によって捉え方や解決策は異なります。海外の記事や研究、ニュースなどを参照することで、問題を多角的に考えることができ、より深い研究につながるのです。

このように英語の資料を活用することで、情報源の幅が広がり、生徒が新しい視点から課題を考えるきっかけを得られるというメリットがあります。

メリットその3:思考力・表現力を育てられる

探究学習では、集めた情報をそのまままとめるだけでなく、内容を整理しながら自分の考えを形成することが求められます。その過程で、物事を論理的に考える思考力が養われるのです。

また、調べた内容や自分の意見を英語で説明したり発表したりする活動を通して、考えを分かりやすく伝える表現力も身につきます。相手にどう伝えたら意味が通じやすいか、ロジックジャンプをなくすにはどういう構成にしたらよいか、などは、英語だからこそ考える必要が出てくるもので、日本語で発表するだけではあまり身につきません。

こうした力は、英語の運用能力を高めるだけでなく、他の教科や将来の学びにも役立つ重要な力と言えるでしょう。

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英語の授業でできる探究学習の授業例

では、実際にどのような授業を行えば英語の授業内に探究学習を導入できるのでしょうか? ここでは、取り入れやすい授業例を3つ紹介します。

授業例①:教科書の長文のトピックをもとに社会問題を探究する

英語の教科書に掲載されている長文は、環境問題やテクノロジー、文化など、社会に関わるテーマを扱っていることが多くあります。こうしたトピックを出発点にして、背景や関連する課題をさらに調べることで、探究学習につなげることが可能です。

例えば、長文で環境問題が取り上げられている場合には、世界の取り組みや日本の現場、解決策などについて英語や日本語の資料を調べ、それらを踏まえて生徒自身の考えをまとめて発表する活動が考えられます。

教科書の内容を深く掘り下げる形で進められるため、英語の授業にも取り入れやすい方法です。

授業例②:日本と海外を比較して文化や社会の違いを分析する

日本と海外の文化や社会制度を比較する活動も、英語の授業で取り入れやすい探究学習の一例です。同じテーマでも国によって考え方や取り組みが異なることが多いため、比較するだけで理解を深めることができます。

例えば、教育制度や働き方、食文化などについて日本と他国の事例を調べ、それぞれの特徴や違いを整理します。そのうえで、なぜ違いが生まれるのかを考察し、英語で発表させるのです。

この取り組みでは、内容理解と表現力の両方を伸ばすことができます。

授業例③:英語のスピーチやプレゼンテーションを行う

探究活動の成果を、英語のスピーチやプレゼンテーションとして発表する方法もあります。調べた内容を整理し、自分の意見や結論を英語で伝えることで、探究の成果を表現する機会をつくることができるでしょう。

例えば、調査したテーマについてスライドを作成し、クラスで発表したり質疑応答を行ったりする活動が考えられます。

発表を通して内容への理解を深めるとともに、英語で自分の考えを伝える力、質問を考える力を伸ばすことにもつながる取り組みです。

英語の授業で扱いやすい探究テーマ例

どのような探究テーマなら、英語の授業で取り入れやすく、扱いやすいでしょうか。ここでは、6種類に分けて、探究テーマの例を挙げていきます。

探究テーマ① 環境問題

環境問題は、英語の長文でも頻繁に扱われるテーマのひとつです。さまざまな観点から探究的な問いを設定することが可能です。

  • なぜプラスチックごみ問題は世界的な課題になっているのか
  • 日本と海外では環境政策にどのような違いがあるのか、またそれはなぜか
  • 個人の行動で環境問題はどこまで改善できるのか
  • 再生可能エネルギーは今後どこまで普及するのか
  • 企業は環境問題にどのような責任を負うべきなのか

探究テーマ② 異文化理解

異文化理解も扱いやすいテーマです。文化や価値観の違いを比較することで、世界の多様性について考える探究活動につなげることができます。

  • なぜ文化によって価値観や行動の基準は異なるのか
  • 日本の文化は海外でどのように受け止められているのか、またそれはなぜか
  • 異文化間のコミュニケーションではどのような誤解が生まれやすいのか
  • グローバル化は文化の多様性にどのような影響を与えているのか
  • 異文化理解を深めるためにはどのような取り組みが必要なのか

探究テーマ③ テクノロジーと社会

テクノロジーの発展は、私たちの生活や社会のあり方に大きな影響を与えています。AIやSNS、インターネットなどは英語の長文でもよく扱われるテーマでしょう。

  • AIの普及は人間の仕事や社会にどのような影響を与えるのか
  • SNSは人間関係やコミュニケーションのあり方をどのように変えているのか
  • テクノロジーの発展は本当に人々の生活を豊かにしているのか
  • オンライン教育は従来の教育をどこまで変える可能性があるのか
  • テクノロジーの進歩とプライバシー保護はどのように両立できるのか

探究テーマ④ 教育

教育というトピックも最適です。学校制度や学び方の違いなどを手がかりに、社会との関わりを考える探究活動につなげることができるでしょう。

  • 日本の教育制度にはどのような特徴や課題があるのか
  • 海外の教育制度は日本とどのように違うのか
  • オンライン教育は今後の学び方をどのように変えるのか
  • 学力以外に学校教育で育てるべき力とは何か
  • 探究学習は生徒の学びにどのような影響を与えるのか

探究テーマ⑤ 言語・コミュニケーション

言語やコミュニケーションというトピックも、英語の授業で扱いやすいでしょう。言葉の使い方や文化との関係を考えることで、英語自体の理解も深めることができます。

  • なぜ英語は世界共通語として広く使われているのか
  • 英語と日本語ではコミュニケーションの取り方にどのような違いがあるのか
  • 和製英語はどのように生まれ、どのように使われているのか
  • 言語の違いは人の考え方や価値観にどのような影響を与えるのか
  • SNSやインターネットの普及は言語の使い方をどのように変えているのか

探究テーマ⑥ 社会問題

社会問題は、英語の長文でも頻繁に扱われるテーマであり、同時に探究学習にも発展させやすい分野です。世界で起きているさまざまな課題について調べ、多角的に考えるきっかけにすることができます。

  • 世界の貧困問題はなぜ解決が難しいのか
  • ジェンダー平等は世界でどこまで進んでいるのか
  • 移民問題は社会にどのような影響を与えているのか
  • 食品ロスの問題はどのように解決できるのか
  • グローバル化は社会の格差にどのような影響を与えているのか
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英語による探究学習の効果を高めるポイント

テーマや授業のやり方が定まったら、次は実践に移っていく段階です。

英語の授業で探究学習を行う際、何に気をつけるべきなのでしょうか。英語の授業における探究学習の効果を高めるポイントを4つに分けて説明します。

効果を高めるポイントその1:「問いの質」を重視する

探究学習では、どのような問いを設定するかが学びの深さを大きく左右します。

「〇〇とは何か」「〜〜の割合は増えているのか」といった調べ学習で終わってしまうテーマではなく、「なぜ」「どのように」といった視点を含む問いにすることで、考察を深めやすくなります。

つまり、簡単に答えが出る問いではなく、複数の視点から考える必要があるテーマを選択するのが大切なのです。

この指標を生徒に伝えて、問いをオープンなものにブラッシュアップしてあげることを意識してください。適切な問いを設定することで、情報収集や議論が活発になり、より充実した探究活動につながります。

効果を高めるポイントその2:生徒のレベルに合った英語資料を用意する

また、生徒の英語力に合った資料を用意することが重要です。難しすぎる英文を使うと、内容理解に時間がかかり、探究に時間を割けなくなってしまいます。

そのため、学習段階に応じて提示する記事の長さや語彙レベルを調整したり、日本語資料と併用したりする工夫が必要です。無理のないレベルの英語資料を活用することで、生徒は内容理解と探究活動の両方に集中できるようになり、効果を最大限に引き出すことができます。

効果を高めるポイントその3:発表の形式を明確にする

最終的にどのような形で成果を発表するのかをあらかじめ明確にしておくことも重要です。

例えば、英語のスピーチやプレゼンテーション、レポート作成など、発表の形式を具体的に示しておくことで、生徒は活動のゴールをイメージしやすくなります。

また、発表の形式が決まっていると、調査や情報整理の進め方も考えやすくなるでしょう。探究の目的に沿った発表方法を設定することで、学習活動をより効果的に進めることができるのです。

効果を高めるポイントその4:評価基準を事前に示す

また、どのような観点で評価するのかを事前に示しておくことも大切です。

評価基準が明確になっているだけで、生徒は活動の目的や到達目標を理解しやすくなり、また、モチベーションも保ちやすくなります

調査の内容、考察の深さ、発表のわかりやすさなど、評価のポイントを具体的に示しておくとよいでしょう。ルーブリック形式にして、段階的な評価基準を示すのもひとつの手です。

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総合的な探究の時間に英語学習を組み合わせる方法

ここまで、英語の授業に探究学習を取り入れる方法について解説してきました。一方で、総合的な探究の時間の活動と英語学習を組み合わせるという形も考えられます。ここでは、その方法を2つ見ていきましょう。

英語の資料を使って調べる

総合的な探究の時間でも、調査の過程で英語の資料を活用することが可能です。海外のニュース記事や研究資料などを参照することで、日本語の情報だけでは得られない視点に触れることができます。

また、英語の資料を読むことで、世界でどのように議論されているのかを知ることができ、探究テーマをより多角的に考えるきっかけにもなるでしょう。英語の資料を取り入れることで、調査の幅を広げ、より広くより深い探究学習にすることができるのです。

英語でプレゼンテーションを行う

探究学習の成果を英語でプレゼンテーションする方法もあります。調査した内容や自分の考えを英語で発表することで、探究のまとめと英語の表現活動を同時に行うことができるのです。

例えば、スライドを作成して英語で発表したり、簡単な質疑応答を行ったりする活動が考えられるでしょう。発表の場を英語にすることで、探究で得た内容を伝える力と英語での発信力の両方を伸ばすことができます。

まとめ

英語の授業で探究学習を取り入れるといっても、特別な活動をゼロから用意する必要があるわけではありません。教科書のトピックを出発点に問いを立てたり、英語の資料を活用したりするだけでも、授業に探究学習の要素を取り入れることは十分可能です。

また、英語は世界中の情報にアクセスできる言語でもあります。英語の資料を読んだり、自分の考えを英語で発信したりする経験は、生徒が社会のさまざまな課題について多角的に考えるきっかけにもなるでしょう。

英語を「考え、伝えるためのツール」として活用することは、これからの学びにおいてますます重要になっていきます。

ぜひ授業の中に探究的な活動を取り入れ、生徒が主体的に学ぶ機会を広げてみてください。

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ご質問やご相談だけでも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

大学では教育学部基礎教育学コース所属。世界史が好きだったことを踏まえ、教育の国ごとによる違いやその歴史に興味を持っている。趣味はアニメ鑑賞、読書。

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