夏休みが終わり、学校が始まっても勉強に身が入らない、という悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。今回は「2学期になってやる気が出ません。どうしたらいいですか?」という質問に対し、「夏休み明けにやる気が出ない」という状態の原因を2つの観点から解明し、具体的なアドバイスを東大文系 外国語マスターの清野さんが行ってくれました。どれも今日から実践できる実用的なものとなっています。ぜひ参考にしてみてください!
動画サムネイル右 永田耕作:東大理系 計算の申し子
動画サムネイル左 清野孝弥:東大文系 外国語マスター
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夏休み明けってやっぱり・・・
清野:永田さん、夏休み明けはどのような感じでしたか?
永田:夏休み明けは、やはりテンションが下がりましたね。休みが終わってしまったという寂しさに加え、すぐにテストがあったり、学校行事があったりして、なかなか気分が乗らない時期でした。
私の場合、9月に文化祭や体育祭といった行事があったため、8月下旬から2学期が始まり、9月中旬まで行事が続くようなスケジュールでした。行事が終わると、一気に燃え尽きてしまう感覚がありましたね。
清野:行事の都合もありますし、夏休み直後に期末テストがある学校も多いので、そこでダメージを受けているのかもしれませんね。「宿題テスト」のような感覚で、せっかく楽しかった夏休みが終わってしまう、というパターンでしょうか。
「睡眠サイクル」を整えよう
清野さんいわく、夏休み明けやる気が出ない原因の1つ目は睡眠量の変動だそうです。一体どういうことでしょうか?
夏休み明けは「睡眠サイクル」が乱れがち
清野:夏休み期間中は、起床時間や就寝時間が不規則になりがちですよね。学校へ行く必要がないため、昼の12時に起きたり、夜遅くまで起きていることも珍しくありません。その結果、睡眠サイクルが乱れてしまいます。
しかし、9月や8月下旬になると、急に毎日朝6時に起きる生活に戻さなければなりません。この急激な変化は、体に大きな負担となります。このような状態は「社会的時差ボケ」、英語では「ソーシャルジェットラグ」と呼ばれます。
永田:ジェットラグですか!飛行機で長距離移動した時のような感覚ということですね。
清野:まさにその通りです。海外旅行で時差ボケを経験すると、体に大きな負担がかかりますよね。夏休み明けに学校生活に戻ることは、それに近い状態だと考えると、モチベーションが続かないのも無理はありません。やるべきことが増えているのに、時差ボケのような状態で学校生活を送っているのですから。

どうすればソーシャルジェットラグが治るの?
清野:では、この社会的時差ボケに対する対策法ですが、まずは「毎日午前6時に起きる」というサイクルを確立することです。
永田:当たり前のことのように聞こえますが、意外と難しいですよね。
清野:そうですね。疲れていると感じると、土日につけを取り戻そうと遅くまで寝てしまう人が多いですが、これは逆効果だと言われています。「睡眠負債」を解消しようとする行為は、かえって体調を崩す原因になります。
9月は特に、このような生活リズムの乱れから体調を崩す人が多い時期です。だからこそ、土日も平日と同じように早起きすることが大切なのです。一見、自分の固定観念とは違うかもしれませんが、あえて早く起きることで、やる気の維持につながります。
永田:眠い時に早く起きる、というのは、まるで「筋肉痛を直すには筋トレをする」というような、アクティブレストの考え方に似ていますね。
清野:その通りです。ぐったりと寝ているよりも、軽く体を動かした方が疲れが取れるという感覚は、多くの方が経験しているのではないでしょうか。寝すぎて頭が痛くなる時など、まさにアクティブレストが有効なケースです。部活動などをしている方なら、この感覚はよく理解できるはずです。体が痛いはずなのに、部活を始めると意外と動ける、という経験はありませんか?これも、睡眠との関連があるのかもしれません。
ドーパミン中毒から抜け出そう
やる気が出ない2つ目の原因、それはズバリ「ドーパミン」かもしれません。現代人が陥ってしまいがちなドーパミン中毒について対処法を学びましょう。
楽しさへのハードルが上がってしまっているかも・・・
清野: 夏休み中は、ゲームやスマートフォンなど、手軽に楽しめるものが溢れていますよね。しかし、学校の勉強や部活動のように、すぐに楽しみが得られないものに対して、飽きが来てしまうのです。
清野:学校や部活動における楽しみというのは、人間関係と同じように、時間をかけて築いていくものですよね。すぐに最高の快楽が得られるわけではありません。幼馴染のように、長い時間をかけて親しくなり、分かり合っていくことで楽しさが増していくものです。
部活動でも、例えば150日間の練習を経て大会に出場し、そこで得られる達成感や喜びがあります。入部初日に行われた大会では、そこまでの達成感は得られないでしょう。
清野:この「すぐに楽しみが得られる」という感覚は、YouTubeショートやTikTokなどの短い動画コンテンツで顕著です。15分や10分といった短時間で楽しさを得られる、いわゆる「タイパ(タイムパフォーマンス)」が良いものに慣れてしまうと、学校生活がつまらないと感じてしまうのです。
これは、単なる体感だけでなく、脳の仕組みとも関係しています。スマートフォンやゲームに没頭している時は、「ドーパミン」という快感物質が分泌されます。夏休み中、このドーパミンが常に分泌されている状態が続くと、夏休みが終わった途端に「あれ?何も楽しいことがない」と感じてしまうのです。脳が、常に刺激を求めている状態になってしまうんですね。
スマホをやめて自分の人生を取り戻す
清野:この状態を解決するための一つの方法として、「夏休み明けは、あえてスマートフォンやゲームの使用を控える」ということが挙げられます。夏休み中のように、すぐに楽しめるものばかりに触れていると、学校の勉強や部活動がつまらなく見えてしまいます。そこで、意識的にそれらを制限し、学校生活の中での楽しみを見つけていくことが重要になります。
永田:なるほど、「スマホをやめよう」というアドバイスはよく聞きますが、その理由として「脳の仕組み」に言及するのは新しい視点ですね。短い時間で快感を得ることに慣れてしまうと、じっくりと楽しみを得ることに脳を戻す必要がある、ということですね。
清野:まさにそうです。Instagramでも、すぐに「いいね」がついたり、DMで気軽に友達とやり取りできたりするのは楽しいですが、時間をかけてじっくりとコミュニケーションを取ることや、長期的な目標に取り組むことには飽きてしまう、という人もいるのではないでしょうか。
部活動での3年生の引退試合を想像してみてください。あれほど多くの応援が得られるのは、3年間の積み重ねがあるからです。入部したばかりの1年生が、3年間頑張ってきた先輩と同じように応援されることは、まずありません。
Instagramで、数秒の投稿に「いいね」がつくことと、部活動で3年間努力した結果、多くの人から応援されることでは、得られるものの質も量も全く違います。
永田:確かに、Instagramの「いいね」と、部活動での3年間の努力に対する応援では、価値が違いますね。SNSに時間を費やすのは、ある意味もったいないと感じることもあります。
清野:そうですね。夏休み明けは、できるだけスマートフォンやゲームの使用を切り詰め、学校の勉強や部活動に集中できる環境を取り戻すことが大切だと思います。

まとめ
「夏休み明けにやる気が出ない」という状況は誰しもが陥ったことのあるものだと思いますが、こうやって理論立ててみてみるとちゃんと対策ができるものだと分かりますね。
個人的には9月といえども厳しい暑さが残っていますので、特に冷房の効いた部屋で夏休み中過ごしていた人は夏バテに気をつけて、食事・水分補給・睡眠を心がけてほしい、と考えています。できるだけ早くモチベーションを回復できるように頑張りましょう!
