複数の言語を学ぶことで、「言語能力」は磨かれる

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「3ヵ国語話せる」はずなのに、話せない?

みなさんは、何ヵ国語を喋れますか?

多くの人は、生まれてすぐ日本語を学び、中学・高校で英語を学び、大学で第二外国語(フランス語や中国語など)を学んだと思います。理屈の上では最大で3つの言語を習得しているはずです。

……ところが、実際にはどうでしょう。中学高校で6年間英語を学んだはずなのに、「英語を喋れますか?」と聞かれると「いや、全然…」と答えてしまう人がほとんどではないでしょうか。

たしかに、複数の言語を本当に使いこなすのは難しいことです。時間もかかるし、学習も面倒に感じるでしょう。けれど、だからといって「一言語だけに集中すればいい」という話でもないのです。

言語は“同時”に学ぶからこそ伸びる

僕(西岡壱誠)が今回注目したのは、『1年で5ヵ国語をマスターした私の外国語「同時」習得法』という本です。この本を読んで強く感じたのが、「言語というのは、実は一つの言語だけを学んでいても、本当の意味では習得できない」ということでした。

「同時に複数の言語を学ぶことで、言語運用能力が磨かれる」——この視点を持つと、今までとは違った角度で英語や日本語を見つめ直すことができます。

日本語も「外国語学習」に役立つ?

そもそもの前提として、英語でもフランス語でも中国語でも日本語でも、言語というのはすべて「言語運用能力」において地続きの存在だと僕は考えています。

僕自身、偏差値35から東大に合格した人間ですが、かなり変わった勉強法を使って英語を克服しました。それは――漢字の参考書に、英語を書き込んでいくという方法です。

たとえば「厳格」という熟語の下に「strict」と書く。「容貌」という熟語には「looks」と書く。難しい日本語の熟語が英語でどんなふうに表現されるのかを、ひたすら書き込みながら比較していったのです。

なぜこんな勉強をしたかというと、偏差値35だった頃の自分は語彙力が壊滅的になかったからです。英語を学んでいても、そもそも日本語の意味が分からないとどうしようもない。

たとえば suggest(示唆する)という英単語があっても、「示唆する」の意味が分からない。だから suggest の意味も理解できない。この悪循環を断ち切るには、英語と日本語を同時に学ぶしかなかったのです。

翻訳する中で「ニュアンスの違い」が見えてくる

さらに、英語と日本語を行き来する中で、言葉の持つ「ニュアンスの違い」も見えてきました。

たとえば、「矜持」という日本語は、英語では「pride」と訳されることがあります。でも「プライドが高い」と聞くと、なんだか嫌な人という印象がありますよね。そうすると、「矜持」のニュアンスを本当に英語にするなら、「dignity(尊厳)」や「self-respect(自尊心)」の方が適しているかもしれません。

こうやって複数の言語を行き来することで、語彙の意味や使い方が深まり、単なる「単語暗記」では得られない視点を手に入れることができるのです。

他の言語を学ぶと、英語も上手くなる?

この本の中で特に面白かったのが、「言語の中に、他の言語が溶け込んでいる」という視点です。

日本語には漢字(中国語)やカタカナ(欧米語)が入り込んでおり、「終わる」という行為を「終了する」とも「フィニッシュする」とも表現できます。「楽しい」は「愉快」「素敵」「ナイス」「アメイジング」といった具合に、言い換えの幅も広い。

英語においても同様です。たとえば:

  • get(手に入れる)→ obtain(入手する)
  • start(始める)→ commence(開始する)
  • stop(終える)→ terminate(終了する)
  • think(考える)→ consider(考慮する)

これらは、元はすべてフランス語由来のフォーマル語彙なのです。

「例えば、get(手にいれる)、start(始める)、stop(終える)、think(考える)といった基礎的な英語の動詞表現を考えてみましょう。これらはどれもゲルマン語系の単語(昔ながらの英語)で、インフォーマルな響きがあります。

これらをフォーマルな英単語に言い換えると、obtain(入手する)、commence(開始する)、terminate(終了する)、consider(考慮する)となります。英単語が変わるとネイティブはどう感じるのかを、括弧の中の日本語訳の変化で表しています。こうしたフォーマルな英単語は、実はどれもフランス語の単語に由来しており、フランス語で「入手する」「開始する」「終了する」「考慮する」は、obtenir、commencer、terminer、considererと言います。つまり、フランス語を学ぶと、自然と難しい英語を身につけられるという関係性があるのです。
「1章 1年間で5ヵ国語を身につけた外国語「同時」習得法とは?」より抜粋」

つまり、フランス語を学ぶと、英語のフォーマルな語彙が自然と身につくという現象が起こるのです。

言語を相対化することで「運用能力」が高まる

こういった話は、英語だけを学んでいたのでは決して気づけません。「obtain や commence を使うと、相手にどう響くのか?」という感覚が、別の言語を学ぶことで腑に落ちてくるのです。

日本語で「考える」と言う時に、フォーマルにすると「考慮」となるのと同じですね。

言語運用能力を高めるという意味で、この本は非常に有益です。すべての言語を完璧にマスターするためのガイドとして読むのも良いですが、英語や日本語を相対化し、深く理解するための“鏡”として他の言語を使う、という読み方もできるはずです。

ぜひ、手に取って読んでみてください。

1年で5ヵ国語をマスターした私の外国語「同時」習得法

著者:清野孝弥
出版社:SBクリエイティブ

順番にやるな! 同時にやれ!

1年で5ヵ国語を独学でマスターした現役東大生が伝授。
複数の外国語を”短期間”で”同時”に習得する極意とは!?
勉強の常識「順番にコツコツと」を覆す、誰でもできる方法論。

国内独学で1年で5ヵ国語(英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語)を話せるようになり、そこからインドネシア語、イタリア語、オランダ語、韓国語も学んだ著者が編み出した、複数言語を同時に習得する技術を公開。塾や予備校に通わずに東大に現役合格した著者ならではの「誰でもできる独習法」がここに登場!!


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私たちの講師は現役東大生で 偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠をはじめ、地域格差や経済格差などの多様な逆境を乗り越えた講師たちが、生徒の皆さんに寄り添って全力でサポートいたします。

ご質問やご相談だけでも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

偏差値 35 から東大を目指すも、現役・一浪と、二年年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「暗記術」「読書術」「作文術」で偏差値 70に、東京大学合格を果たす。そのノウハウを全国の小中高生に伝えるため、2020 年に株式会社カルペ・ディエムを設立。毎年100回以上の講演を行っている。著書は『東大読書』『東大作文』『東大思考』ほか多数。漫画『ドラゴン桜2』編集やドラマ日曜劇場『ドラゴン桜』脚本監修担当。MBS「100%!アピールちゃん」「月曜の蛙、大海を知る」にてタレントの小倉優子さんの受験をサポート。見事、大学合格へ導く。

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