世界難民の日

6月20日は、世界難民の日です。みなさまの中には「難民の日」と言われても、自分とはあまり関係のないものだと思う人もいるかもしれません。しかし、難民はみなさんが思っているほど遠い存在ではありません。

目次

そもそも難民とはどのような人のこと?

難民ときいて、みなさまは何を思い浮かべますか。中には、たくさんの人を乗せたいかだや、難民キャンプをイメージする人もいるかもしれません。ここでは、難民とはどのような人々のことをいうのか解説していきます。

「難民」の定義

難民とは、一般に、自国の国境を越えて国外に避難し、自身の国で保護を受けられない状況にある人々を指します。難民がどのような人かを考えるうえで、まずは「難民」という言葉のもととなった表現に立ち返ってみましょう。実は、「難民」は、英語の “refugee” の日本語訳である「避難民」が省略された言葉なのです。避難民というのは、私たちと変わらず平穏な生活を送っていたところに、突然身の危険が降りかかってきたことで避難を強いられたひとびとを表しているのです。

つまり、現在「難民」と呼ばれている人々は、もともと学生・生徒だったり、学校の先生や医者、エンジニアなどの仕事をしていたりと、私たちと何ら変わらないひとびとです。しかし、住んでいるところの状況によって、人種・宗教・酷先・政治的意見や特定の社会集団に属するなどの理由で、迫害や身の危険に遭うおそれがあって他国に逃れざるを得なくなったのです。中には、国境を越えずに自国で避難生活を送っている「国内避難民」もおり、その数も年々増加しています。

日本に難民はいるの?

日本にも難民はいます。しかし、日本は世界の中でも圧倒的に難民認定数が少ない国なのです。例えば、2021年の難民認定率はわずか0.7%にとどまっており、2022年は認定数が過去最多の202人となったものの、10,143人(一次審査・審査請求の合計)が不認定とされています。一方、2021年の他国の難民認定率は、英国が63%、カナダが62%、米国が32%、ドイツが25%などとなります。

日本の難民認定数が少ない背景には、認定基準において「迫害」の解釈が狭すぎるなどでなかなか認定が進まないことや、認定手続きの公正性や透明性の欠如などの制度面の問題があげられます。さらに、社会的な関心の薄さや、入管が難民を「保護」するのではなく「管理・取締り」しようとする姿勢が原因となっています。

難民は決して遠い存在ではない

みなさんは、辛い目にあったときにどうしていますか。おそらく、はじめはもがき苦しみ、そこから少しずつ心を癒しつつ、最終的にはその状況から立ち直ろうと前に進もうとするのではないでしょうか。難民のひとびとも、同じように、身に降りかかった困難な状況を強く生き抜き、一歩踏み出そうとしているひとびとです。また、先述したとおり、彼らは「難民」になる前まではわたしたちの何ら変わらず学校に行ったり仕事をしたりしており、さまざまな能力や力、夢をもっています。彼らは、私たちと状況は違えど、同じ人間であり、自分の置かれた環境の中で強い意思をもって奮闘しているひとびとなのです。

世界難民の日

それでは、世界難民の日とはどのような日なのでしょうか。ここでは、その重要性や目的などについて詳しく解説していきます

そもそも「世界難民の日」ってどんな日?

世界難民の日は、難民への国際的な連携や支援を呼びかけるために、国連によって制定された日です。この日には、世界中で様々なイベントやキャンペーンが行われ、難民問題に関する情報が共有されます。主な目的は、難民の困難な現状や彼らが直面している課題についての意識を高め、国際社会が彼らをサポートするための具体的な行動を起こすことです。

6月20日は、もともとOAU(アフリカ統一機構)難民条約の発効を記念する「アフリカ難民の日」(Africa Refugee Day)でした。2000年に、国連総会で「世界難民の日」(Wrold Refugee Day)とすることが決まりました。

国際社会の支援

国際社会は、難民の人々を支援するためにさまざまな取り組みを行っています。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)をはじめとする国際機関は、保護、支援、再定住などの活動を通じて難民の人々をサポートしています。また、各国政府は、難民への保護と支援を確保するために、国内法や国際法の枠組みを整備しています。さらに、多くのNGOやボランティア団体も、難民の人々への支援活動を展開しています。

世界難民の日には、さまざまな団体がキャンペーンなどを行って認知を高めたり、支援を集めたりといったことに取り組んでいます。国連やNGOのホームページを確認したり、SNSをフォローしたりすることで、それぞれの団体がどのような支援をしているのか知ることができます。

ひとびとが話し合っている様子

NGOの例~国際難民支援団体(REI)~

数多くの難民支援団体の中で、何を参考にすればいいかわからないという人も多いでしょう。ここでは、一例としてRefugee Empowerment International (REI)という団体を紹介していきます。

Refugee Empowerment International (REI)ってどんな団体?

REI(別名:国際難民支援団体)は、日本に本部をもつ認定NPO法人のひとつです。1979年に設立されて以来、避難民の生活や自立支援に携わってきました。日本本部とオーストラリア支部をもっており、東南アジアやアフリカなどにおける避難民支援を行っています。避難民が、自らの権利や尊厳を守って生活できることを推進しており、ファンドレージング(募金活動)によって、教育・職業訓練・起業支援などをサポートしています。介入ではなくパートナーシップによる難民支援を信念としており、スキル開発や地域統合を通して、難民の強さや才能を引き出し、より明るい未来を想像することを目指している団体です。

*REIのホームページはこちらから→https://rei-npo.org/ja/

REIで行っている難民支援プロジェクトの例

REIでは、現在5つの自立支援プロジェクトを支援しています。ここでは、そのうちの2つのプロジェクトを取り上げていきます。

1つ目は、レバノン在住シリア避難民のための幼稚園です。レバノン南部にある幼稚園では、4歳から6歳までの100名の園児を受け入れています。幼稚園では、社会生活を学ぶためのカリキュラムやアクティビティが含まれており、精神的にトラウマを抱え、不安な生活環境で過ごしてきた子どもたちが、チームワークや他者との信頼関係を築くことを学んで、レバノンの小学校へ進学できるように準備する大切な場となっています。さらに、このプロジェクトでは、先生もまた避難民であり、避難民となった教育事業者への雇用機会を創出しています。 

2つ目は、カレンニソーシャルデベロップメントセンター(KSDC)です。ここでは、ミャンマーのカレンニ州の若者たちに向けて、人権・法律・民主主義・環境問題・リーダーシップなどのスキルを養成する9か月間の講座が行われます。2002年以来つづくプロジェクトであり、これまで約500名の卒業生がキャンプの運営委員会や各NGO団体に就職したり、地域社会にて人びとへ人権の指導を行ったり、さらには政府にはたらきかけて人びとの生活向上に貢献しています。すべてのKSDCの教師は、自身も避難民の立場であり、その多くはこの講座の履修生です。

2023年「世界難民の日」に向けた取り組み

REIでも、世界難民の日に向けてキャンペーンが行われています。今年のテーマは、”Plant a Seed of Healing”。避難民の心に癒しの種をまいて、自立への一歩をサポートしようという内容です。具体的には、6月を通して募金キャンペーンが行われます。寄付金は、上記のプロジェクトを含む、REIが支援するプロジェクトに送られます。たとえば、教師の報酬や備品・教材、ひとびとの健康衛生費などとして使用されます。 

さらに、6月24日に代々木のアリサンパークカフェで難民の経験について考えるイベントが開催されます。募金キャンペーンやイベントの詳細は、ホームページから確認していただけます。

*募金はこちらから→https://rei-npo.org/ja/get-involved/donate/

ひとびとが募金をしている様子

わたしたちにできることは?

難民支援のために、わたしたちにできることはあるのでしょうか。ここでは、今日からできる難民支援の方法をいくつか紹介いたします。

寄付

まず、一つ目は寄付です。難民支援のための団体やプロジェクトに寄付することで、現地での救援活動や自立支援を支えることができます。寄付金は、難民の生活状況を改善したり、教育・医療・食糧の提供に役立てられます。

しかし、中には、どこに寄付すればいいのかわからないという人もいるかもしれません。自分が寄付したお金を確実に必要としている人々に届けるためには、国連や認定NGO・NPOなど信頼できる団体に募金しましょう。HPなどを見て、募金の具体的な利用先を確認するのもポイントです。緊急支援には、UNHCRなどの大きな支援団体・組織への寄付が有効でしょう。一方、直接的で長期的な自立支援に関わりたい場合は、REIのような小規模の団体に寄付することが効果的です。

政治へのはたらきかけやボランティア活動

さらに、政治に関心をもつことやボランティア活動も重要な役割を果たします。現に、日本の難民支援が遅れている原因のひとつに、社会的関心の薄さがあります。難民支援に関心をもち、関連する政策や活動に参加することで、より具体的に政府に働きかけて支援を行うことができます。また、現地や国内の難民支援団体でボランティア活動に参加することも、難民の生活に直接的な影響を与えることができます。

情報を集めて共有しよう

難民問題についての情報を収集し、家族や友人、社会と共有することで、意識を高めることができます。また、SNSやブログなどのオンラインプラットフォームを活用して、難民問題についての情報を発信することも効果的です。

まとめ

世界難民の日は、難民の人びとの状況に対する理解を深め、支援の輪を広げるための特別な日です。難民の人々が直面する困難に対して意識を高め、支援活動に参加することは、より公正で包括的な世界を築くための重要なステップです。共感や連帯の輪を広げ、ひとびとが安全で尊厳ある生活を送れるよう支援活動に参加してみてはいかがですか。

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この記事を書いた人

東京大学では、法学を専攻。人権問題や環境問題に関心があり、学部卒業後は公共政策大学院に進学(予定)。高校時代から遅くとも22時半には就寝する、極度の朝型。趣味は、ランニング・映画鑑賞・サッカー観戦など。

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