思考整理に役立つ「KP法」とは?アクティブ・ラーニングと合わせて解説!

わかりやすく授業内容を説明したい、生徒にプレゼンテーションをさせる時、魅力的で画期的な方法を使いたい。普段、授業を繰り返していると、こんな悩みにぶつかることもあるのではないでしょうか。

今回は、そんなお悩みを解決すべく、アクティブ・ラーニングにつながるとされている思考整理・プレゼンの方法、「KP法」について、東大教育学部生の碓氷明日香が徹底解説します!

目次

KP法とは?

そもそも、「KP法」とはどのようなプレゼン方法なのでしょうか。

「KP」は「紙芝居プレゼンテーション」の略で、A4の紙にキーワードやフレーズを書き、それをホワイトボードや黒板に順番に貼り付けながら話していくプレゼン方法のことを指します。スライドを使ったプレゼンが主流である今、あえて「紙とペン」で情報を整理し、聞き手にわかりやすく説明するのです。

近年、ワークショップやビジネスシーンで少しずつ広がりつつあるこの方法ですが、教育現場でも使い方次第では効果を発揮できるかもしれません。

KP法を使う目的

では、KP法はどのような目的のもと、どのような場面で使うことができるのでしょうか。

思考を整理するため

まず、「思考を整理する」ために使うことが可能です。1枚ごとにどのキーワードを書いて、それをどのようにつなげるか考えることで、何が重要なのかが明確にわかり、頭の中で情報に濃淡をつけることができるようになります。

ただ授業を受動的に聞いているだけだと、情報が全て等価値に感じられ、何がキーワードでどの部分を中心に理解すればいいかがまではわかりにくいでしょう。そこで、授業内容の中で重要なポイントを自分で見つける目的でこのKP法を使えば、生徒ひとりひとりが単元の要点を抑え、ただ聞いているだけの時よりも深く理解できるのです。

他者に要点をわかりやすく伝えるため

そして、整理した思考を「他者にわかりやすく伝える」ためにも使うことができます。実際に思考整理の時に使用した紙を発表用に整え、説明のために順番を並び替えて、その流れに沿って自分の言葉で発表するのです。

思考の整理に活用した紙なので、発表する際にその時の思考回路をありありと思い出すことができます。そのため、発表の途中で何を話せばいいかわからなくなってしまうような生徒でも、落ち着いて話せるかもしれません。

要点を相手に説明する発表シーンで使える方法、ということですね。

KP法のメリット

KP法を取り入れることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは4点あげたいと思います。

聞き手が話を追いやすい

1つ目は「聴く側が話を追いやすい」ということです。KP法では、話し手が話す順番に合わせてタイミング良く新しい紙を貼り付けていくので、聞き手としては、今何の話をしているのか非常にわかりやすいでしょう。視覚と聴覚の両方を同時に刺激できるという点で、発表が明快になるのです。

また、スライドであれば、先に進んでしまうと、前のスライドに戻ることはあまりありません。途中で話についていけなくなったとしても、話し手がひとりひとりの理解の進度に合わせてもう一度説明する、ということは難しいでしょう。つまり、スライドを使った発表は、一度置いていかれるとそれ以降ついていくことはほぼ不可能なのです。一方で、KP法は、これまでに使った紙が全て貼ってある状態で話が進んで行きます。すなわち、すでに過ぎた話の軌跡が見える形で置いてあるわけで、聞き手は過去の紙を見ながら、自分の理解度に合わせて話を追うことが可能になるのです。

情報量が抑制される

最近は、スライドに情報を詰め込んで、相手がそれを全て読む前提で話を進める発表が、どの現場でも増えてきています。そもそもプレゼンの基本として、スライド1枚に1情報ずつ載せるべきとはよく言われているのですが、時間の都合もありますし、物理的にはいくらでも情報を詰め込むことが可能なので、なかなか気をつけるのが難しいのでしょう。

ですが、あまりにも詰め込み過ぎのスライドでは、話の要点が見えづらく、聞き手が理解できずに困ってしまいます。そこで、このKP法を使えば、「情報量の抑制」が可能になるのです。

紙に手書きできる情報には限界があります。A4の紙を黒板に貼ることを考えれば、後ろの席の人にも見えるようにするためには、せいぜいキーワード1つか2つしか書けません。必然的に情報が抑制されて、要点が明確になり、聞き手もパンクしない程度のちょうどいい発表に調整されるのです。

特別な機械が不要

また、KP法の大きなメリットとして、「特別な機械が不要」であることが挙げられます。最近はICT教育が普及してきて、最低でも1人1台情報端末を使いながらの授業が基本となっていますが、通信がうまくいかなかったり、教員側のICT技術が足りなかったり、生徒が端末をうまく使いこなせなかったりと、まだまだ問題点はたくさんあるでしょう。

そんな時、KP法を使えば、紙とペンさえあれば、授業の進行が可能です。ICT教育がうまくいかなかった場合に、すぐに代替ができます。授業で使える1つの方法として持っておくだけで、そうしたハプニングにもスムーズに対応できるのです。

アクティブ・ラーニングにつながる

思考整理にKP法を使う場合、何が重要なんだろう?とひとりひとりが積極的に考えなくては、紙に要点をまとめることはできません。KP法でプレゼンをする場合でも、内容を理解し、重要なポイントをつかんでいないことには、論理的にわかりやすく説明することは不可能です。

つまり、KP法を使うことで、どの場面であろうと、生徒の積極的な思考を促すことができます。これぞ、アクティブ・ラーニングです。これからの時代を生き抜くためには、問題を解決する積極的思考が欠かせません。KP法によって、その姿勢を学び、自律的な思考力を身につけることが可能なのです。

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KP法のデメリット

一方で、KP法にはデメリットも存在します。デメリットを把握しておくことで、その改善を意識しながら授業ができると思うので、ここでは2つのデメリットを説明しましょう。

準備に時間・負担がかかる

KP法は紙に手書きでキーワードを書き込んでいく作業が必須です。この準備に結構時間がかかります。教員が説明にKP法を取り入れる場合は、授業準備に時間がかかることを想定しなければなりません。教員の業務過多が問題視されている中、他の業務とうまく折り合いをつけながら、準備時間を確保する必要があるのです。

また、生徒にKP法で発表してもらう場合も、その準備時間をしっかり取る必要があります。短い時間で準備をして発表まで持っていってしまうと、準備不足で書き終わりませんでした、途中までしかできていません、という事態に。実際にやってみながらにはなりますが、最後までまとめ上げて発表に移るまで、少し多めに時間を取ってあげることを意識すると良いでしょう。

記録性に欠ける

また、KP法は紙ベースなので、記録性に欠けるというデメリットもあります。スライドであれば、データを残しやすいですが、紙だとどうしても保管が難しいです。ICT教育の導入が進められている中、端末上に保管してある他の授業資料との関連を見いだすのも若干手間がかかるため、教員のフォローアップが必須です。

発表で使った紙をスキャンしてデータ化するという記録方法もありますが、手間がかかるので、これも教員の業務量と相談して取り入れるかどうか選ぶ必要がありそうです。

授業への取り入れ方

では、実際に教育現場で「KP法」を取り入れるには、どうすれば良いのでしょうか。ここでは3種類の取り入れ方を提案します。

教員が授業内容の説明に使う

まず1つ目は「教員が授業内容の説明に使う」方法。上述の通り、教員の負担は増えますが、例えば長文の内容を整理する時や1コマの最後にその授業の要点を振り返る時などに使うことができるでしょう。

この時、生徒がその先KP法を使う可能性を視野に入れて、お手本となる紙芝居プレゼンテーションができるように意識してください。要点をわかりやすくまとめ、論理的に説明できるように順番を整理し、見づらくならない程度にカラーや図・イラストを取り入れた紙を使うようにすると、魅力的なプレゼンになるはずです。

グループでの論点整理・発表に使う

2つ目は「グループでの論点整理・発表に使う」方法。テーマを決めて、4人程度のグループをつくり、グループ内で思考を整理、最終的に発表してもらいます。1人の負担がそれほど大きくなく、授業時間内に発表までこぎつけやすいというメリットも。

グループ内で各生徒が積極的に意見を出し合い、分担・協力して発表準備をする必要があるので、主体性やコミュニケーション能力など、多様な力の成長が見込まれます。

個人での発表に使う

3つ目は「個人での発表に使う」方法ですが、これはあまりおすすめしません。ひとりひとりに思考の整理をさせ、最終的に発表までしてもらう方法です。これだと、個人の負担が大き過ぎて、複数のコマに渡って準備が必要になるかもしれませんし、何をどうすればいいかわからず身動きが取れなくなる子が出てくる可能性も。

発表まで持っていかなくても、個人の論点整理には役立つはずなので、そこだけにKP法を取り入れるのも一つの手です。

まとめ

KP法のメリットとデメリット、教育現場でどのように使うべきかについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。生徒の多様な力を引き出し、成長させるためには、受動的に聞くだけの授業では足りず、主体的に考え、交流し、まとめる授業が必要です。これからの時代、KP法を始めとしたさまざまな授業スタイルを取り入れていくことが大切になってきます。この記事が、生徒の未来を切り開く授業の糧となれば幸いです。


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この記事を書いた人

大学では教育学部基礎教育学コース所属。世界史が好きだったことを踏まえ、教育の国ごとによる違いやその歴史に興味を持っている。趣味はアニメ鑑賞、読書。

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