子どもの体験格差ってなに?教員ができる対応策とは

子供の体験格差ってなに?教員ができる対応策とは

「子供に習わせたい習い事ランキング」などの子供の課外活動に関する議論は尽きません。

「東大生の何割がピアノを習っていたか」「小学校の何割の子が塾に通っているか」などのアンケートや調査を一度は目にしたことがあると思います。

しかし、習い事には常に費用や機会の問題が付きまといます。家があまり裕福でなかったり、地方に住んでいたりなど子供の習い事にはさまざまなハードルが存在します。

この個別のハードルにより発生する子供の経験における格差のことを体験格差といいます。

昨今議論が盛んな体験格差ですが、この記事ではまず体験格差とは何か、そしてそれに対して公立の小中学校や保護者がどのように対応していくべきかについて取り上げます。

この記事が少しでもこの教育問題の理解、改善の一助となれば幸いです!

目次

子どもの体験格差とは?

そもそも体験格差というワードはどのような状態を指すのでしょうか。その定義や問題点について簡単に紹介していこうと思います。

体験格差の定義

体験格差とは、子供が経験することのできる経験の格差です。具体的に辞書的な意味合いが定められているわけではありませんが、一般的にピアノなどの習い事、旅行などが挙げられるでしょう。

この体験格差は経済的理由や地理的理由などから発生します。

習い事や体験活動をするには何をするにも費用や時間がかかります。シングルマザーで習い事に使えるお金がない、旅行に連れて行く暇がないなど事情がある方々はたくさんいます。

一方で両親が裕福で、時間もある家庭に生まれた子供はさまざまな経験に恵まれ、豊かな人間性を育てやすくなっています。

こうして、子供たち自身にはコントロールしきれない要因でしばしば将来への道が決まってしまうのです。

体験格差の具体例

そんな体験格差ですが、具体的にはどのような事例が考えられるのでしょうか。以下に体験格差の例として考えられるものをいくつか挙げてみます。

① 教育機会の格差

家庭の経済状況によって塾や習い事への参加が制限され、学力の差や進学先の選択肢に影響が出ることが考えられます。早期教育や受験対策が受けられない子供は、不利なスタートを切りやすいと言えるでしょう。

実際の学校現場では、塾に行っている子供は学力が高い傾向があり、必然的に良い高校、大学というようにステップアップしていくでしょう。

② 文化・芸術への接触機会の差

美術館やコンサート、旅行などの文化的体験が限られることで、感性や興味の幅に差が生まれると言えます。特に地方や経済的に厳しい家庭ではこうした体験が難しいでしょう。

③ 自然体験の格差

逆に、都市部に住む子供は、自然に触れる機会が少なく、キャンプや農業体験などのアウトドア活動に参加しにくいと言えるでしょう。こうした体験の有無が、五感の発達や環境意識の形成に影響を与えることがあります。都市部に住むがあまり裕福ではなく、海水浴やキャンプなどの自然と関わるアクティビティを経験したことがない子供も今では大勢います。

子どもへの影響 / 体験の重要性

課外学習の重要性はしばしば研究がなされており、さまざまな結果が示されています。

そんな中でおおよそ一致した見解としてみられるのは「子供の時の課外活動の豊富さで、将来の可能性が変化する」ということです。

誰しもが自分の子供や教え子には将来を明るく過ごしてほしいと考えているでしょう。そのために習い事や小さな時の経験というのは非常に大切だと言えるのです。

最近では習い事の有無を学生の頑張りとして評価し、推薦入試などの結果にも影響を及ぼします。推薦入試においては、例えばクラシックバレエを10年続けていたといったような習い事でさえもアピール材料となる時代なのです。

体験格差が発生する原因

それではそもそもなぜ体験格差というものは存在してしまうのでしょうか。ここでは体験格差が発生する原因を要素にわけて解説していきます。

経済的な理由

最も大きな原因としては経済的な理由が挙げられるでしょう。

習い事として一般的な学習塾ですが、月謝で月2から3万円程度は最低でもかかります。受験用の本格的コースとなれば月額で5万円以上かかるケースも珍しくありません。

また、旅行などに関しても海外旅行であれば飛行機代で家族の場合10万円以上かかり、それに加えて現地での宿泊費、交通費、食費などがかかります。

このようにして考えると子供を学校に行かせ、衣食住を充実させた上で、課外活動をさせようと思った場合、相当な費用がかかることが伺えます。

日本の平均世帯年収は530万ほど、中央値は400万円ほどですが、月単位で言えば1月当たり平均で40万円ほど。そこから税金や生活費が抜けていくことを考えるとかなり厳しい現実があります。

コロナ禍による影響

コロナによる学級閉鎖なども経験格差を生み出す要因です。コロナに限らず、地震や津波なども特定の地域や世代の子供たちの経験を縛る要因となり得ます。

コロナウイルスの感染が拡大していた時期には、学生の学生生活について気にする声が多く上がっていました。学校行事の中止やオンライン授業の導入が相次ぎ、生徒たちの「学校生活らしい経験」が奪われてしまうためです。数々の学校行事や普段の学校生活が遅れなかったことで、同級生とともに過ごす時間が減少し、それまでの世代では当たり前だった経験ができなくなっているのです。

仮にコロナ世代の高校生たちと、それ以外の高校生たちの間で成長や将来性に関して何らかの差が発生した場合、それは経験格差のせいであると言えるかもしれません。

地域的な影響

次に挙げられるのは地域的な影響です。

美術館、科学館といった公共施設や、さまざまな情報というのは東京をはじめとした都心部に集積する傾向が強くあります。

習い事を始めるにしても、習い事の教室や先生も都心部に多くいるため、地方に住んでいる子供達にとっては不利に働いてしまいます。

都心部に住んでいる子供の方がより多くの体験や情報に触れやすい環境であることは経験の格差を生み出しています。

IT格差

近年地域的な経験格差を解消しうるのではないかと期待されているのがITですが、そのIT自体が格差を生み出しているとも言えます。

都心部のインフラが整備された地域に住む子供達はインターネットを活用し、自身の経験や情報収集の幅を急速に拡大させました。

一方で、学校でのIT教育が未だ未整備であったり、ITに理解の薄い地域にすむ子供達はこの情報網の拡大から取り残されていると言えます。

したがって本来格差を是正する可能性が期待されているITでさえも、一歩間違えば格差を拡大する要因となり得てしまうのです。

体験格差を解消するための取り組み

さまざまな格差を生み出す要因について確認しました。ここではこの体験格差を解消するためにどのような活動があるのか、保護者や学校の教員には何ができるかについて確認していきます。

公的機関の取り組み

近年ではこの体験格差にアプローチするために、活動をしている市や自治体が多く見られます。

千葉市の運営している「千葉市放課後子どもプラン」では英語、季節行事、プログラミングなどの体験型のプログラムを継続的に提供しています。

(参考:https://www.city.chiba.jp/kyoiku/shogaigakushu/shogaigakushu/documents/honpen.pdf

利用料金は昼の部では月3500円、夜の部では月5000円など破格の値段となっています。

プログラムの導入校では利用者数もかなり多く、多くの保護者や子供の成長の支えとなっています。

NPOでの取り組み

非営利組織(以下、NPO)の活動も盛んに行われています。

「みんなのコード」という非営利法人では近年のIT教育の格差問題に焦点を当てて活動をしています。

具体的には、学校や企業と連携をしながら情報の授業の実施やカリキュラムの開発を促進しています。

その他プログラミングを学ぶためのソフトを無料で提供するなどの活動をしています。

(参考:https://code.or.jp/about/

企業と絡めた取り組み

NPO団体と合同で子供達に活動機会を提供する企業も多数存在しています。

ポテトチップスで有名なカルビーは子供達のアイデアを商品化するなどのコンテストを開催したりと、「食育」をテーマに活動しています。

(参考:https://www.calbee.co.jp/foodcom/about/

現在では日本に存在する企業の多くが子供達の体験活動に貢献しようとNPO法人とともに活動をしています。

例えば、特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクールは、J.Pモルガン、Zoff、Sonyなどの著名な企業と多くのイベントを開催しています。

(参考:https://npoafterschool.org/social-design/

体験格差の解消に向けて教員ができること

学校における教育はこの体験格差を緩和し、誰しもが楽しんで学ぶ環境を作るために重要な役目をになっていると言えます。

それでは学校で働く教職員の方々にはどのような役割が期待されているのでしょうか。

授業内での配慮

まず、授業で使う例や教材が、特定の体験を前提としていないかに注意を払うことが重要だと言えます。

例えば「家族旅行」や「海外経験」など、一部の子にしか当てはまらない話題は、無意識に子どもを分断し内容に差ができてしまう可能性があります。

背景知識を丁寧に補い、誰でも理解できるような導入や工夫を重ねることで、すべての子が安心して学べる授業環境を作ることができると言えるでしょう。

学校生活の中で小さな体験活動を入れる

特別な行事でなくても、日々の中に「体験の機会」を組み込むことも大切でしょう。

例えば、給食の食材を調べたり、図書室での自由読書を定期的に取り入れたり、地域の自然を観察するなど、小さなことの積み重ねが大きな学びになります。

こうした子供達が自主的に取り組む必要のある活動を意識的に取り入れることで、家庭の事情にかかわらず、すべての子に体験を広げる機会を提供できます。

また、自主的に動く経験をさせることで、子供達自らが考えて経験をつかみにいく主体性を育むことができます。

寄付やボランティアを行う

教職員がすべてを背負うのではなく、外部の力を上手に活用することも大切です。地域の企業や保護者、卒業生などに協力を募り、教材や体験活動の費用をサポートしてもらうことができます。

また、先ほど取り上げた企業やNPOのボランティア講師を招いての特別授業や、地域資源をいかした体験学習も効果的です。

こうした取り組みは、その学校の地域性を生かした多様な経験となり得るのです。

終わりに

いかがでしたか。

現在深刻な問題となりつつある教育格差ですが、この問題に意識的に取り組んでいる人々や団体はたくさんあります。

そうした人々や団体の協力を探し求めることで子供達の豊かな未来を育むことができるのです!


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この記事を書いた人

東京大学後期教養学部認知行動科学コース。自称、東京大学舞踊学部競技ダンス専攻。東大受験と同時に海外大学を受験したことをきっかけに、海外受験関連の発信に興味を持つようになった。

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