日本がふるさとの「外国人」の話 第6回

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海外旅行は身体壊す

今年の夏、久しぶりに家族でインドに行くことになった。さまざまな事情により、幼少期のころ以来一度もインドに行っていなかった私にとって、このインド旅行は今年一番の大イベントであった。

しかし、予期せぬ不運はそういうときにこそやってくるのである。旅行の前々日、家で仕事をしていると、何だか具合が悪い。頭は重いし、身体全体がだるい。嫌な予感がして熱を測ってみると、なんと38度の熱があった。即座に家族に連絡し、とにかく休もうとその日はとっとと寝ることにした。

次の日、すなわち旅行前日の朝、起きてすぐに熱を測ってみると、熱は全く下がっていない。冷蔵庫にあったエナジードリンクを口の中に流し込んで、ぼさぼさの髪の毛をポニーテールに縛り上げ、近くのクリニックに行く。コロナの検査を含めて、お医者さんにあちこち診てもらったが、結果返ってきたのは、

「何もおかしいところないよ。休めばそのうち治る。」

というお医者さんの言葉とにこにこした笑顔である。

そうか、何でもないのか。と安心しながら家に着いてまた熱を測ると、なんと39.4度の高熱である。これは、困った。何でもなくないじゃないか。夕方になっても、熱はいっこうに下がらない。明日は出発の日だ。何とかして回復しないと。そして、荷造りをしないと。焦る気持ちとは裏腹に、熱はまだ全く下がる気配がない。

しかし、すでにフライトをキャンセルする期限も過ぎてしまっているので、一足早く東京に来てくれた母親の助けを借りて、なんとか荷造りだけ済ませることにした。あとは、次の日に体調が改善していることを祈るのみである。

寝る前に「絶対に旅行に行くんだ」と自己暗示したのが功を奏したのか、出発当日の朝、また熱を測ってみると37.6度。まだ頭痛が残っており、万全からはほど遠いが、これならなんとか飛行機に乗れそう。そう思いながら、意を決して空港に向かった。

こんな状態でインドに行くなんて、ますます体調が悪化するじゃないか。そう思った読者もいるかもしれない。現に、旅行の何日か前に、今年の夏にインドに行くという話をしたら、「お腹壊さないでね」や「体調気を付けてね」という返事が多々返ってきた。また、インドといえば暑いというイメージからか、熱中症に気を付けてねと言う人もいた。

そんな中、高熱で弱った身体でインドに行った筆者だが、果たして無事旅行を乗り切ることはできたのだろうか。

結論からいうと、無事乗り切れただけでなく、体調は3日ほどで大きく回復したのである。もちろん、熱中症もお腹を壊すことも一度もなかった。

え、なんでだ?と不思議に思う人もいるかもしれない。そんな人々の疑問を解消するために、少し解説しよう。

まず、熱中症の点では、私が行ったところは、東京よりはるかに過ごしやすい気候である。場所によっては、日中の最高気温が30度前半まで上がるところもあったが、朝晩は20度台半ばまで気温が下がる。気温が30度を越える時間帯は、真昼のほんの数時間だけなのだ。さらに、旅行の最後に訪れた南の大都市バンガロールにいたっては、朝晩は20度台前半まで冷え込むため、真夏の洋服ではもはや肌寒く感じるほどである。真昼も30度まで気温が上がらないことがほとんどだ。

飲食に関しては、旅行客がお腹を壊す原因となりうるものは、そもそも全く口にしていない。ペットボトル以外の水(飲食店で出されるお冷など)は飲まなかったし、ストリートフードなどは一切食べていないのである。かといって、現地の食事を楽しんでいないというわけではない。市場で果物を買ってきて宿で切って食べたり、民泊で出してくださるその土地独特の食事をお腹いっぱい食べたりと、工夫しながら現地の食文化を堪能していた。

また、旅行先が自然あふれるのどかな土地であったこともあり、都会のストレスから解放されて、心身ともに日頃の疲れがしっかり癒されたのだ。

外国となると、メディアや人の話などから日頃見聞きする情報から、画一的なイメージを抱いてしまいがちである。しかし、同じ国の中で、気候や文化など目を丸くするほどの多様性を抱える国も、世界にはたくさん存在する。また、それぞれの土地の特性に合わせた暮らしの工夫があることも忘れてはならない(その土地の食文化などに慣れていない旅行者ならなおさら工夫が必要である)。「この国は○○だ」と自分の抱くイメージから決めつけてしまうのは、ずいぶん早とちりだろう。

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この記事を書いた人

東京大学では、法学を専攻。人権問題や環境問題に関心があり、学部卒業後は公共政策大学院に進学(予定)。高校時代から遅くとも22時半には就寝する、極度の朝型。趣味は、ランニング・映画鑑賞・サッカー観戦など。

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